「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」などテレビドラマ史に残る多数の名作を書いた脚本家の橋田壽賀子(はしだ・すがこ、本名・岩崎壽賀子)さんが2021年4月4日、死去した。95歳だった。5日、報道各社が報じた。
半世紀余りにわたってテレビドラマに関わり、庶民の哀歓を見つめながら数多くのヒット作を手掛けた。2015年、脚本家では初の文化功労者となった。誰もが知っている多数の高視聴率作品の生みの親だっただけに、ファンや番組関係者らから感謝と追悼の言葉が相次いでいる。
「世界で最もヒットした日本のテレビドラマ」
1925年、日本統治下の現・ソウルで生まれた。日本女子大国文科卒業後、早大でも学んで49年、松竹に入社、脚本部に。のちテレビに移って64年、TBSの石井ふく子プロデューサーと組んで当時の大ベストセラー『愛と死を見つめて』をドラマ化。これが1年間に4回も再放送され、脚本家としての地歩を固めた。68年には早くもNHKの連続テレビ小説「あしたこそ」を担当した。
名声を決定的にしたのは83年から1年間続いた連続テレビ小説「おしん」。全297話の平均視聴率が52.6%という驚異の数字を記録し、いまだにテレビドラマの最高平均視聴率となっている。
苦難の時代を生き抜いた少女の物語は、単なる「国民的ドラマ」にとどまらず、反響は海外にも広がった。アジアを中心に世界約70の国や地域で放送され、「世界で最もヒットした日本のテレビドラマ」となった。
NHKではこのほか連続テレビ小説で、「おんなは度胸」(92年)、「春よ、来い」(94~95年)、銀河テレビ小説で「となりの芝生」(76年)や「お入学」(87年)、大河ドラマでは「おんな太閤記」(81年)、「いのち」(86年)、「春日局」(89年)などの話題作を書いた。