新型コロナウイルスで事実上の鎖国状態が続く北朝鮮の首都・平壌で、北朝鮮国営メディア以外の現地情報を伝える貴重な存在が、在北朝鮮ロシア大使館のフェイスブックだ。
2021年4月1日の投稿では、3月18日に平壌を出発した各国の外交官が中朝国境の都市、丹東で2週間の隔離生活を終えたことを明かしている。あるじがいなくなった各国公館の写真を次々に投稿し、大使館街のゴーストタウンぶりも伝えている。さらに、厳しい物資不足などを背景に、外交官の平壌脱出は「残念ながらこれが最後ではない」とみている。
「平壌を離れていく人々のことは理解できる」
ロシア大使館の書き込みによると、38人の外交官らが隔離生活を終えた。丹東から北京や上海に列車に移動し、そこから空路で帰国する見通しだ。書き込みでは、
「コロナウイルスによる厳しい監禁生活の中で、特に親しくなった平壌の外交団の同僚たちが、幸せな帰国をすることを祈っている」
と、平壌生活を「厳しい監禁生活」と表現した。北朝鮮は20年1月末から空路・陸路ともに国境の閉鎖を続けており、外交官にとっての生活も厳しさを増すばかりだからだ。FBには率直な現地の描写が続く。
「ひとつはっきりしているのは、残念ながらこれが最後ではなく、外国人の脱出は続くということだ。北朝鮮に残っている外国人は非常に少なく、全部で290人未満だ。過去に例がないほど厳しい規制、医薬品をはじめとする必需品の深刻な不足、健康問題を解決する機会の欠如などに、誰もが耐えられるわけではなく、平壌を離れていく人々のことは理解できる」
英国、ベネズエラ、ブラジル、ドイツ、イタリア、ナイジェリア、パキスタン、ポーランド、チェコ、スウェーデン、スイス、フランスの大使館や代表部はすでに閉鎖され、国際連合世界食糧計画(WFP)などの国際人道支援組織の外国人スタッフは全員が脱出。現在平壌に残っている外国の大使は9人、大使代理が4人で、これらの大使館のスタッフも最低限に削減されているという。
平壌脱出した英国大使「北朝鮮で耐えている友人のことを思い浮かべている」
書き込みでは、外交官の帰国で誰もいなくなった公館の写真が次々に投稿されている。「現在、英国、ドイツ、フランス、スウェーデンの外交団が入居している旧東ドイツ大使館の門は、何ヶ月も開かれていない」という説明に続き、ナイジェリア大使館は「掲揚台に国旗が残ったまま」、ブラジル大使館は「表札は、今では読むのも難しいほど」などと、さびれた様子を伝えている。ポーランド大使館の写真には「ポーランドの友人のところにはよく行きました。いなくなったのは残念!」という説明をつけて、日頃の交友関係ものぞかせた。
この書き込みには、平壌を離れざるをえなくなっている外交官も反応している。英国のコリン・クルックス大使は、ロシア大使館のFBについて報じる英ガーディアン紙の記事を引用しながら、
「平壌の英国大使館は20年5月27日に一時閉鎖され、北朝鮮が国境を再び開けることを待ち続けている」
とツイートした。クルックス氏は、インドネシア、インド、ロシアの在平壌大使館のアカウントに言及(メンション)しながら
「北朝鮮で耐えている友人のことを思い浮かべている」
とも書き込んだ。
平壌のロシア大使館では、21年2月に大使館員とその家族が手押しトロッコを使って国境の豆満江に架かる鉄道橋を渡り、ロシアに帰国。その動画や写真をロシア外務省が公開したことが話題になった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)