YOASOBI「夜に駆ける」が若者に刺さったワケ サウンド面から見える「時代性」とは

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【連載】MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music

   「夜に駆ける」。音楽ユニット・YOASOBIのデビュー曲で、昨年ストリーミングを中心に爆発的ヒット。2020年を代表する楽曲の1つとなり、年末のNHK「紅白歌合戦」でも披露された。

   CDを発売せず、デジタル配信のみで楽曲を展開。TikTokでの流行が人気に火をつけた、とも言われる。そして21年3月には、オリコン集計の「ストリーミング累積再生数」で歴代1位を獲得。まさに、今の時代を象徴するような楽曲、といえるだろう。

   そんな「夜に駆ける」は、サウンド的にどんな特徴を持っているのか。音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKE(ムテキデッドスネーク)氏が解説する。

  • YOASOBI「夜に駆ける」の魅力を解説
    YOASOBI「夜に駆ける」の魅力を解説
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メロディの作り方に見た「新しさ」

   昨年各種サブスクにて人気が爆発し、普段生活をしている中で聴かない日がないくらい世の中に浸透していた「夜に駆ける」。道を歩いていたら小学生達が歌いながら帰っていて、流行歌ってすごいなと思いましたし、作家としてその光景を素直に羨ましく思いました。

◆今っぽさが詰め込まれたメロディにBUCHIAGARU!!

   こちらの曲を聴いて、僕が最初に引っかかったのはBメロ。1番での歌詞で言えば「触れる心無い言葉」の部分から、半音階で上がっていくメロディです。

   もちろん頭から終わりまでメロディも歌詞も素晴らしいのですが、なんだかんだみんなこの部分に惹かれてこの曲を聴いているんじゃないかなと思うくらい、僕の中では衝撃が大きかったです。

   なぜ衝撃だったかと言いますと、このスピードで半音階でメロディが動くと、ほとんどの人はまず正確な音程で歌うことができないと思います。なので、この「夜に駆ける」は、そもそも人が歌いやすいようにとか、覚えやすいようにとか、そういうことは考慮せずに、自分のセンスを信じて、オートチューンやメロダインといったボーカルの音程を補正するソフトを使用して、歌の音程を録音後に直す前提でメロディを作っているんだな、と思ったからです。

   2010年前後からニコニコ動画で流行り出した初音ミクに代表されるボーカロイドの楽曲では、こうした人には歌えないような楽曲は多かったです。そこから十数年を経て、人が歌う曲でもそのようなことを当たり前にするクリエイターが出てきました。

   しかも、今まではそのような曲を作ってもサブカルチャーとして捉えられ、マジョリティの支持を得ることはあまりなかったようなイメージがあったのですが、今ではここまでの市民権を得られるまでになったんだな、と感動すら覚えます。

   「夜に駆ける」のように、音程を補正するソフトが進歩した今からこそできる、そもそも人が歌うのって結構難しいよね、というメロディが入っている曲を聴いていると、時代性を感じて非常におもしろいなと思いますし、これから先の音楽はどうなっていくのだろうと楽しみになります。

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