「自分は自分だよ。周りを気にしても仕方ないよ」
浪人後、滋賀大学経済学部に進学。琵琶湖のほとりで、野球とは無縁な学生生活を送ることになった。しかし、ここで人生を変えるような出会いが訪れる。
「ヨット部に勧誘されて、一人ずつ自己紹介をすることになりました。心臓バクバクで、緊張が最高潮に達していた時、隣の人が『自分は自分だよ。周りを気にしても仕方ないよ。大きい声で喋れば大丈夫』とアドバイスをしてくれました。助言通り、大きい声で喋ったら、問題なく話すことができた。アドバイスをくれたその人も、吃音の症状を持っていました」
それまでも「言いづらい言葉を言いやすい言葉に変換して伝える」「心の中で『せーの』と助走をつけて喋る」など、吃音の影響を緩和するため工夫を重ねてきた加藤さん。ヨット部での出会いをきっかけに、気持ちの面でも楽になり、症状は改善に向かっていたという。
大学卒業後は公務員として就職。職場では、学生時代に諦めた軟式野球部に入った。結婚して、家庭も持った。順風満帆とも思える生活を送っていた50代半ば、首相官邸が掲げる「人生100年時代構想」に心を突き動かされた。
「いくつになっても新しい学び、新しいチャレンジができる。ならば、高校時代からの憧れだった硬式野球をやりたい。ただ、60歳、70歳になったら体力的に厳しくなる。今しかチャンスがないと思いました」