ウマ娘の交流にツッコむのは「野暮」
幅広い年代の競走馬をウマ娘として登場させているので、血縁関係にあるが世代の違う馬が、ウマ娘では同世代としてごく普通に交流している。
「メジロマックイーンはゴールドシップの母方のおじいちゃんですが、ウマ娘では同じ世界を生きていて、この2人は相性もよく、多くの絡みがゲームでもアニメでも発生します。時空の歪みを逆に利用し、血統などの背景をもって同じ今に存在しているのです。世代的な整合性にツッコミを入れている人もいたりしますけど、私から言わせれば時間軸だけで関係性を見るのは『野暮』だし、血統などの軸を見ればものすごい関係性をウマ娘の中で構築しているので競馬ファンならそこに気づいて!って思いますね」(佐藤さん)
シンボリルドルフとトウカイテイオー、アグネスタキオンとダイワスカーレットのようにモデルの血縁関係が濃いウマ娘はウマ娘同士でも濃い関係が描かれる。また若いプレイヤーが現役時代を知らない競走馬もウマ娘として登場するので、
「私は競馬が昔から好きですが現在40歳なのでマルゼンスキーのレースはリアルタイムで見たことはありません。もちろん、マルゼンスキーがどんな競走馬だったのかは資料や動画などで少しは知っていますが、トレーナーという立場になって「疑似追随体験」ができ、「知ってるつもり」だった競走馬についても知らなかった、忘れていたエピソードを基にした演出が出てくるので、新鮮さも味わえます」
という。ゲームの好調が続けば、テンポイント・ハイセイコーといったさらなる名馬の登場も期待できないだろうか。
ゲームではウイニングランをもじった「ウイニングライブ」として、レースで入賞したウマ娘がライブを披露する演出が用意されている。アイドルゲーム的要素でもあるが、これは競馬ファンにはどう映るか。佐藤さんはこう分析した。
「競馬面から見れば『馬券を売らずにアイドル的な人気と着順でライブが行われる』というのはある意味ウィナーズサークルやパドックでファンが集う点とイベント的には近いものを感じます。ゲームではレースの成績に応じて『ファン』が増えて実質的に獲得賞金のかわりのような形になっていますが、ギャンブルとしての競馬でありながらスポーツイベントとしての競馬要素がうまく取り込まれていると感じています」
ただ「勝てる馬かどうか」に限らない、馬それぞれにファンが惹かれる関係も、ウマ娘とプレイヤーたるトレーナーの関係に似ているようだ。