悲劇の馬に夢見る「イフ」のドラマに泣ける
「ゲームが競馬のようにリアルか、というよりも気がつけば随所に競馬のリアルが反映されているソシャゲです」と話す佐藤さんだが、「トレーナーという立場になるとウマ娘が用意されている形になる。そしてウマ娘にはそれぞれ全く違う固有の指定出走レースと条件が課されている。この条件にスタッフが元ネタとしている競走馬のリアルな馬生を丹念に表現しているところが『リアル』ですね」と分析する。
ゲームやアニメの中でのウマ娘は、怪我をすることはあっても死なない。それゆえ、
「ライスシャワーやサイレンススズカといった現実では悲しい最期を迎えた競走馬に『もし無事だった場合の未来のストーリー』を提案してくれているのです。競馬を知らない人はアニメとのメディアミックスで、すでに競馬を知っている人からするとクリア条件を見た『だけ』で泣ける。実際、私は泣きましたし、そこからアニメも見てさらに泣いた。20年も前の出来事を思い出して泣けるなんて考えもしなかったです。現実はゲームより少し残酷です」
という、競馬ファンには泣ける展開も用意されている。ウマ娘をトレーニングしていく過程にも、こんな特徴があるという。
「実際の競馬でいえば『調教』ですが、たとえば過去の育成競馬ゲームではなかった『賢さ』のトレーニングがあります。実際の競馬ではゲート試験や馴致にあたる部分です。競走馬も生き物ですから当然知能や性格があるわけです。これをゲームで表現するのはなかなか難しい部分だったはずですが、ウマ娘という擬人化的な変化をすることによってそれが可能になりました。レースでの敗因はスピード不足やスタミナ不足だけではありません。調子だったり展開だったり、様々な勝因、敗因がありますが、それを克服するためにスキルを付けたり調子を戻すために休養(ウマ娘ではお出かけ)したりする、というのが良いですね」
個々の競走馬の性格はウマ娘のふとした瞬間の表情やセリフにも反映されており、ゲームファンがモデルの馬に興味を持つまでになっているほど。特にゴールドシップの破天荒なキャラクターは実在のゴールドシップとも比較され、馬の方のゴールドシップのエピソードまでもゲーム界に知れ渡った。