なぜここに立見席を作ってしまったのかーー。
プロ野球・埼玉西武ライオンズの本拠地で、2017年オフから継続して改修工事が行われてきたメットライフドーム(埼玉県所沢市)。21年3月26日、ついに改修を終えて「グランドオープン」を果たし、同日開催のチーム開幕戦では多くのファンが詰めかけた。
しかし、改修後の球場に「野球が見られない立見席」が設けられていたとツイッター上で話題に。なぜ、こんな席が誕生したのか。広報担当者に話を聞いてみた。
物置けるカウンターはあるが...
メットライフドームを含む周辺エリアでは、17年オフから段階的な「ボールパーク化」の工事を実施。19年にはチームストアの新設、20年には2軍球場のリニューアルや子供向けの屋内遊戯スペースなどの新設を行った。
そして21年には西武鉄道の引退車両を展示した「トレイン広場」の開設や、屋外遊戯施設の新設、新しい大型ビジョンの設置などを実施。球場名物だった外野スタンドの芝生エリアは、全て座席に生まれ変わった。
新しいメットライフドームは3月開催のオープン戦から開放され、球場を訪れたツイッター上の野球ファンも「めっちゃきれいになってる」「変わりすぎててビックリ」と、その変貌ぶりを驚いていた。
そんな中、「ある席」の存在がツイッター上で話題に。なんと、試合の様子が全く見えない立見席が球場内に設けられていたのだという。席の写真を投稿したツイートには「そり立つ壁」「(試合を)見せる気なくて草」「心の目で(試合を)見る感じなのかな」などの声が寄せられている。
これじゃあ、球場に来た意味がじゃないかーー。懐疑心を抱いたJ-CASTニュース記者が21年3月26日、メットライフドームを訪れた。すると、確かに一塁側内野スタンド上段でその席を発見した。
スタンド上部の壁沿いにある「見えない立見席」は、6席が連なって設置されていた。物を置けるようなカウンターが設けられ、内野側から外野側にかけて、それぞれ「SC61-SC66」という座席番号も割り振られている。
席としては販売せず
もっとも外野側にある席「SC66」の前に立つ壁の高さは、150センチメートルほど。身長175センチメートルの記者が身を乗り出せば、なんとか緑色のグラウンドが見渡せる。しかし、内野側の席に行けば行くほど壁は高くなり、一番端の「SC61」や「SC62」に至っては3メートルほどの高さだ。当然、目の前に映るのは、壁の灰色一色。これでは、身長198センチの助っ人砲、エルネスト・メヒア選手をもってしてもお手上げだろう。
一体なぜこんな席が生まれたのか。J-CASTニュースが24日、西武の広報担当者に取材すると、この立ち見席は2020年の改修で設置したものだという。メットライフドームの立見席はスタンド上部の壁沿いをなぞるように設けられ、ほとんどが指定席として販売されている。
しかし、この席に関しては目の前が壁で試合が見えないことから、席に番号は振ってあるが、実際には販売をしていない。「周辺は飲食店などが多く立ち並び、お客さまがドリンクやフードを置いて、気軽にカウンターでお楽しみいただく選択肢もあると考えた」(広報担当者)と設置の意図を説明し、観客には自由な用途で使ってほしいとした。
広報担当者によると、メットライフドームには同じようなカウンター付きの「未販売立ち見席」が12席存在するという。試合の合間には「見えない立見席」のカウンターに肘をつき、誰かとおしゃべりするのもいいかもしれない。