「細々とでも、現地の言葉を伝え続ける」 震災10年で終わるつもりだった被災地発ラジオが、存続を決めた理由【#これから私は】

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「向いた方が前。たどり着いたところはスタートライン」

   「震災10年」から3日後。21年3月14日の「onagawa now!」では、「女川復興調査隊 100人インタビュー」と題し、番組スタッフによる女川町民への聞き取り調査の様子が放送された。町民にぶつけたのは、こんな問いだった。

「町の復興状況をどう思うか。100点満点で点数をつけるとしたら?」

   町民から返ってきた点数は「100点」「95点」「80〜90点」「80点」「40点」と様々だった。「ハード面での復興」に満足感を示す人が多かった一方で、「ソフト面では個人差がある」「(2月13日のような大きな地震が来ると)恐怖感や不安感が戻ってくる」「負の経験は抜けない」と、「心の復興」に課題を感じているという人もいた。

   「自身の復興」は進んだかーー。番組中、ともに「さいがいFM」時代から放送に携わってきたスタッフの宮里彩佳さんに、こう問われた佐藤敏郎さん。次のように思いを語った。

「『後ろ向き(な状況)を乗り越える』なんて言葉も、私はあんまりピンとこなくて。向いている方が前なんだなって思うんですよ。人から見れば『あいつは暗いな』『後ろ向きだな』って言われるけど、それはその人にとっての『前』。だから、向いた方が前。たどり着いたところはスタートライン。そう考えると、復興の点数は、俺は100点なんだな」

   4月から「onagawa now!」は「おながわ☆なう。~復幸ラジオ~」と番組名を改め、毎週土曜日18時30分へ枠を移動。メインパーソナリティーも「女川探検隊」と称した20代の若手メンバーに代わり、番組は新たなスタートを切ることになる。

4月からの「Onagawa Now!」新メンバーを務める佐藤俊輔さん、石森未夢さん、阿部こころさん(左から、大嶋智博さん提供)
4月からの「Onagawa Now!」新メンバーを務める佐藤俊輔さん、石森未夢さん、阿部こころさん(左から、大嶋智博さん提供)

   被災地のメディアとして「老舗」の地位を築くまでになったOnagawa FM。一方で、「震災10年」は、ラジオを取り上げるために女川へ訪れる「東京のメディア」との関係性に苦慮した10年でもあった。(続編は28日公開予定)

(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)

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