「たとえ細々とでも、現地の言葉を伝え続ける」
そして2021年。前身の「さいがいFM」から数えて10年を迎えるが、大嶋さんは「節目の10年で事業をやめようと思っていた」と語る。
OnagawaFMは不動産事業や広告収入などで儲けがある大手メディアのように、安定したビジネスモデルを構築しているわけではない。そして、「復興のトップランナー」と言われた町の復興計画は19年に完了。壊滅した町が「普通の町」へと戻っていく中、復興の現状を伝える必要性はなくなったのではないかーー。そう、考えたという。
しかし、結果的には女川町からの「続けて欲しい」という強い要望もあり、事業は11年目に突入することになった。事業継続にあたって、大嶋さんはこんなことを感じたと話す。
「メディアとしての影響力は、在京のテレビ局などには全く及ばない。でも、OnagawaFMでは、女川の人たちが自分たちの言葉で、フィルターを通さず、直接、リスナーに向けて発信している。しかも、未だに何万という聴衆者がいて、我々のことを応援してくださっている」
「大手のメディアさんは、毎年『3.11』に合わせて集中的に情報を発信しています。ただ、我々が同じ時期に何かを発信したとしても、きっと埋もれてしまう。それでは『何をやっているんだろう』という徒労感が募るばかりです。たとえ細々とでも、現地の言葉を伝え続ける。それこそが、我々に課せられた役割なのだと思います」