故郷の今を理解してもらう契機になれば
東北在住者に「復興五輪」について聞いてみた。仙台市の40代男性会社員は、「(震災)追悼式典の菅首相の式辞でも、『復興五輪』については全く触れられなかったことが象徴するように、オリンピックが復興の後押しになると考えている人は皆無なのではないでしょうか」と指摘。同じ仙台の40代女性会社員も、「被災地にとって本当に復興の手助けになるかは疑問。東北の人の気を引こうとしているだけなら、逆に失礼です」と話した。
一方、福島市の男性運転手は、地元開催の五輪を「めったにないこと」と評価し、楽しみな様子を見せた。コロナで沈滞気味の状況に、「五輪を契機に街も元気になってくれれば」と期待を寄せる。
作山さんの場合、震災から10年が過ぎて五輪に対する気持ちが少し変わってきたようだ。
浪江に初めて戻れたのは、除染が済んだ震災5年後。実家は既に取り壊したが、その敷地に倉庫をリフォームして一時帰宅できるようにした。「母はそこでカフェを開きたいと言っています」。生まれ故郷は、忘れられない。だから五輪に対して、こんな願いを語った。
「浪江に帰るたび、復興が進んでいると感じます。でも、まだ帰還困難区域が残っています。五輪競技を観戦に福島に来て、現状を見ていただく機会になればよいかもしれません。ご自身の目で見て、地元の人の話を聞いて、ありのままを感じてほしい」
新型コロナの影響で、人と接するのは難しいと作山さんは分かっている。それでも、五輪が故郷の今を理解してもらう契機になればと望んでいる。
(J-CASTニュース 荻 仁)