戯曲の「デジタルアーカイブ化」はなぜ必要だったのか 無料公開に踏み切った思い、担当者に聞いた

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公開に向けて苦労した点は

   丸尾さんによれば、戯曲デジタルアーカイブ公開から10日後の3月16日現在、既に多くの上演希望の問い合わせが寄せられているという。丸尾さんは「上演の機会に繋がれば劇作家の利益にもなります。戯曲を死蔵させないということは、戯曲演劇界・文化界全体の1つの貴重なコンテンツになりえます」とその意義を語った。

   また丸尾さんは、「戯曲」という言葉自体を知らない人も多いだろうと推察し、そんな人々もサイトを通して戯曲に興味を持ってもらえたら嬉しいと話す。

「戯曲は確かに小説のような地の文がなく、読みにくいかもしれません。しかし戯曲は演劇の設計図みたいなもので、読み方が分かれば楽しめると思います。
例えばもし好きなタレントやアイドルの方々が出演した戯曲があれば、覗いてみてほしいです。演者の方々が何を見て演じているのか、そういう興味も持っていただけたら嬉しいです」

   戯曲デジタルアーカイブは、劇作家協会会員を中心とした約30人の委員会で制作された。戯曲の著作権や誤字脱字の確認、公開PDFの体裁を整えるといった作業には、俳優や劇作家を志望する人も協力してくれたという。

   公開に向けて力を入れた点はとにかく多くの戯曲を収録すること。予算や事業期間が限られる中で、できるだけ多くの戯曲を集めるために、600人ほどが所属する劇作家協会に協力を呼び掛けた。また歴史的価値のあるものなど残すべき戯曲については、著作権者を調べて直接声掛けも行った。

「権利者を探すのは大変でした。小説などの管理を行う日本文藝家協会に登録されている方もいれば、全く登録されていない方もいます。また演劇から離れたところにいるご家族・ご遺族が著作権者ということもあり、連絡先が分からないこともありました。そうした場合はかつて劇作家が所属していた劇団や大学の教え子などの伝手をたどり、連絡先が判明するまでかなり時間がかかった方もおりました」

   しかし権利者を明らかにするのも戯曲デジタルアーカイブの大事な役割。人々が興味を持った戯曲の権利者に気軽にアクセスしやすくすることで、上演の機会が増えることを期待している。

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