中国政府がツイッターを使った外交戦を展開する中で、在京中国大使館からも激しい言葉でツイートが発信されている。中国側が特に神経をとがらせる、新疆ウイグル自治区をめぐる問題への反応だ。
大使館アカウントは、中国側の主張に沿ったツイートばかり投稿する匿名アカウントの書き込みを紹介しながら、米国のポンペオ前国務長官を念頭に「米国の一部の政治屋がとにかく科学を無視する癖があります」と批判した。
ポンペオ氏に報道局長「重ねたうそは数え切れない」
新疆ウイグル自治区の少数民族が中国政府に迫害されているとされる問題では、ポンペオ長官(当時)が2021年1月、ジェノサイド(集団虐殺)と人道に対する罪に認定したと発表。中国外務省の華春瑩報道局長は記者会見で、
「ポンペオ氏がここ数年で重ねたうそは数え切れないほどで、今回の件も、その捏造(ねつぞう)のひとつに過ぎない」
と反発していた。
在京中国大使館によるツイートは、最近の北京の様子や、国営メディアによる記事を紹介したり、華春瑩氏による英語のツイートをリツイートしたりする内容がほとんどだ。だが、3月16日のツイートは少し様子が違った。
匿名アカウントの書き込みを引用し、うれし泣きする絵文字付きで「賛成!」
大使館アカウントは、匿名アカウントの書き込みを引用し、うれし泣きする絵文字付きで「賛成!」と書き込んだ。この匿名アカウントにはフォロワーが(3月17日夕現在、)187人しかおらず、プロフィールには「日本語がわかるから、新疆の声をもっと多くの日本の方に届いていきたい」(原文ママ)としか書かれていない。引用されたツイートには動画がついており、そこではウイグル人らしき女性が標準中国語(普通話)で、
「最近、ポンペオのうんざりするうそを聞いて、非常に怒っている。彼が言っていることは新疆では全く起きていない」
「ポンペオは新疆のウイグル族に強制不妊(手術)が行われていると主張しているが、真実を言わせてほしい。最近、私のいとこに子どもができた。主張が本当なら、私たちは石から生まれてきたのか」
などと主張しており、発言には英語の字幕もついている。動画ツイートには
「ウイグル人が不妊手術を強制されているって?おかしくない?それが事実なら、私たちが石から生まれたの?!」
という日本語による説明も添えられている。
大使館アカウントは、動画に「賛成!」するツイートに続く形で、
「米国の一部の政治屋がとにかく科学を無視する癖があります」
とも書き込んだ。ポンペオ氏を念頭に置いているとみられる。
このツイートが発信された3月16日には、東京で日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が行われ、共同文書では中国を名指しして「深刻な懸念」を表明している。このタイミングを意識して対米批判を強めている可能性もありそうだ。
「恥を知れ」ツイートで波紋
在京大使館で「過激ツイート」で知られてきたのがロシア大使館。18年には一般人に「恥を知れ」とツイートしたことが波紋を広げた。今でも強い調子のツイートは健在だ。ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を編入するきっかけになった住民投票から丸7年になる21年3月16日には、ロシア外務省報道官のコメントを翻訳して紹介する形で、ウクライナ政府の抗議を
「失った手足の『幻肢痛』についてウクライナ政府が他の国々といかなるプラットフォームで話し合おうとも、2014年の国民投票で採択した決定をクリミア住民が変えることはない」
などと一蹴。ロシア国旗の絵文字つきで
「クリミアがロシアに再編入して7年間で、半島では多くの改善が見られました」
などと編入の正当性を主張した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)