識者「正直、古い内容だなと思いました」
記事は、企業の採用担当者らを中心にSNS上で拡散し、「産経はよくこれを出したし、内定塾もよく出せたな」「入社時はそれでいいかもしれないですが、働き始めると誰も得しない」と懐疑的な見方が少なくない。
『就活のワナ』などの著作がある大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、J-CASTニュースの取材に「正直、古い内容だなと思いました。就活で嘘をついた方がいい、というのは20年、30年前の古いマニュアルです」と感想を話す。
石渡氏によれば、現在では嘘をつく学生を否定的にみる企業が大多数だという。マニュアルを信じていた学生が採用側になり、「そのばかばかしさ」に気づいたこともあり、企業・学生の双方が正直になる方が「得」だと考察する。
「企業からすれば、ミスをしたときに正直に言えるかどうかが重要。仮に、その場を取り繕う社員だと、ぼや程度で済んだ話が炎上となり、企業のイメージを大きく引き下げることにもなりかねない。そのため、新卒採用では、嘘をつく就活生は基本的に落とされやすい」
「それから、企業が嘘かどうか、判定できなくても、企業からすれば就活生の嘘を事実として扱う。たとえば、語学試験・資格などは就活生の申告が基本。できないものをできる、として、内定を得た場合、その虚像と現実との乖離(かいり)で就活生は苦しむことになる。これは趣味・特技・性格なども同様です」
「嘘」対策を講じている企業は少なくない。面接で回答を掘り下げたり、適性検査で「ライ・スケール(嘘つき度)」と呼ばれる質問を混ぜたりするなどしている。
石渡氏が相談を受けた学生の中にも、嘘をついて自分をよく見せようとする学生は珍しくないという。例えば、アルバイト先のチェーン店でアニメキャラクターを起用して売上が増えた、と喧伝(けんでん)していたが、質問を重ねると店の本部が実施した施策だったことが分かった。
「こういう嘘をつく学生に深掘りすると、嘘がすぐ判明します。しかも、こうした学生でも企業に刺さるエピソードがない、ということはほぼありません。『明らかにあなたが損をするけど、それでも嘘をつく?』ということを説明して、やめさせています」