放送事業会社「東北新社」が外資規制に違反していたとして、武田良太総務相が衛星放送事業の認定取り消し方針を表明したことを受けて、同社が運営に関わる「スターチャンネル」などが視聴できなくなるのではと、ネット上で一時騒ぎが広がった。
各メディアの報道によると、実際は、「ザ・シネマ4K」だけだった。事業認定が取り消されるのに、なぜなのだろうか。
「スターチャンネル」が、ツイッターのトレンドで一時20位以内に
東北新社の事業取り消し方針がNHKなどの速報で2021年3月12日朝に流れると、ツイッター上では、衛星放送の今後に影響すると懸念の声が出た。
同社がグループで、スターチャンネルのほか、「ファミリー劇場」「ヒストリーチャンネル」「囲碁・将棋チャンネル」などお馴染みのチャンネルを運営しているからだ。東北新社側が他社に事業譲渡しなければ、3月末にもこれらが閉局するのではないかとの憶測さえ流れた。
すると、「スターチャンネルは困る」「ほんとどうなるんだろ...」「ますます海外ドラマ難民が増えるな」「スカパー大打撃じゃね?」など悲鳴が相次いだ。ヤフー・リアルタイム検索では、「スターチャンネル」がトレンドの20位以内に入るほどの関心を集めた。
武田総務相の会見や速報によると、2017年1月に事業認定したときは、すでに外資比率が20%超の放送法違反状態だったという。東北新社側は、ミスがあったとし、総務省も見逃していたが、武田氏は会見で、手続きに「重大な瑕疵」があったと断じた。
そして、その後の報道で、取り消し対象になるのは、「ザ・シネマ」の高精細放送「4K」のみだとされた。事業認定は、4K放送に行われ、17年10月に、子会社の東北新社メディアサービスへの引き継ぎも認定されていた。
認定が取り消されるのは、このメディアサービスの事業になるが、4K版ではない「ザ・シネマ」や「ファミリー劇場」「スーパー!ドラマTV」は対象外だと報じられている。
「事業認定は番組ごとに行っており、瑕疵があったのは4Kのみ」
なぜ「ザ・シネマ4K」だけが取り消し対象になるかについて、総務省の衛星・地域放送課は3月12日、J-CASTニュースに取材にこう説明した。
「スターチャンネルなどの衛星放送はいずれも、東北新社の子会社が運営していて、4年前のときは、東北新社本体が事業認定を受けるのは初めてでした。その後、メディアサービスが17年10月、ザ・シネマ4Kを本体から、ファミリー劇場など3番組を他社から引き継いでいます。確かに、メディアサービスは、4番組を持っていますが、事業認定は番組ごとに行っており、瑕疵があったのは4Kのみですので、これだけを対象にしました。4Kではないザ・シネマは、対象外になります」
スターチャンネルなど対象外の番組には、影響はないとした。ザ・シネマ4Kについては、約700世帯が視聴しているとされており、視聴者への救済措置については、こう言う。
「この番組は、たとえ他社に譲渡しても、本来認定できないものだったため、取り消しとなります。しかし、コンテンツ自体は、ケーブルテレビなどに提供はできます。今後、どういった形にするかは、メディアサービス自身が考えることになります」
東北新社の広報室では12日、衛星放送への影響について、「スター・チャンネルを含む他のチャンネルに直接の関係はございません」と取材に答え、視聴者救済措置には、「今後の対応について現時点でのお答えを控えさせていただきます」とした。
なお、同社は同日、総務省による行政処分について、公式サイトで次のようなお知らせを出した。
「この度、弊社の申請手続における誤った対応により、このような事態を招いたことを深く反省し、お客様をはじめ関係者の皆様に多大なご迷惑をお掛けしております事、深くお詫び申し上げます。今後につきましては、聴聞手続及び総務省からの処分に真摯に対応してまいります。なお、当該認定以外の放送サービスについては引き続き継続いたします」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)