「『依存症』は治療法のある病気です」――京急品川駅に掲示されている独立行政法人国立病院機構「久里浜医療センター」の広告が2021年3月上旬、差し替えられた。依存症の例としてあった「ゲーム依存症」の記載がなくなった。
ゲーム依存症については確定的な診断マニュアルや治療方法がないとされているため、SNS上ではこの広告に疑問の声が上がっていた。
「確定的な知見と治療法の集積はない状態」
久里浜医療センターの広告は「『依存症』は治療法のある病気です」というキャッチコピーを掲げ、「依存症対策全国センター」のロゴ内に依存症の例として当初「アルコール健康障害」「ギャンブル等依存症」「ゲーム依存症」が記載されていた。
J-CASTニュースはこの広告を3月4日に品川駅で確認した。しかし8日に再度確認すると、ロゴから「ゲーム依存症」の記載がなくなり、「薬物依存症」と書かれたものに差し替えられていた。
ゲーム依存症については、2018年にWHOが発行した国際疾病分類第 11 版(ICD-11)にに収載されている。翻訳の都合で「ゲーム障害」と表現されることもある。
J-CASTニュースは21年3月5日、厚生労働省の精神・障害保健課依存症対策推進室にゲーム依存症について電話で取材した。担当者よれば、ゲーム依存症(ゲーム障害)は「ICDでも診断のマニュアルなどは策定されていない」として、ゲーム依存症の定義に関わりうるような症状は把握していないという。また、「確定的な知見と治療法の集積はない状態」とのことだった。
「『依存症』は治療法のある病気です」というキャッチコピーで当初「ゲーム依存症」を掲げた上記の広告は、ツイッター上の投稿を参照すると、20年11月末には掲示されていたようだ。
しかし21年2月、SNS上で「ゲーム依存症」への注目度が高まる中でこの広告は「誇大・虚偽広告ではないか」と問題視されるようになっていった。同月は、鹿児島県警察本部サイバー犯罪対策課が「ゲーム障害という精神疾患」という文言を使ってツイートしたのに対して、「国内診断基準は決まってない」、「警視庁としての公式見解なのか」といった声が寄せられ、同課はツイートを削除の上、謝罪した。