なぜゴージャス2階建て列車は「ニートレイン」と揶揄されたのか 定期運行終わるJR「215系」の盛衰

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   2021年3月13日のJRダイヤ改正で、JR東日本の215系電車が定期運用から離脱する。鉄道ファンの注目は同じく特急「踊り子」などの定期運用から引退する185系電車に集まっており、185系の陰に隠れ気味だが、215系も改正後の動向が気にかかる存在だ。

   豪華な車両設備で当時期待を背負ってデビューしたはずが、輸送の実情に合わず性能を持て余すことになってしまった215系の歴史には、一抹の悲哀も感じられる。

  • 215系
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バブル最末期のゴージャス車両

   215系はオール2階建て、片側2扉の車内設備が特徴。全車2階建ては全国のJR在来線の車両の中でもこの形式だけである。運転開始は1992年4月で、客室内は全てクロスシート。東海道線の「湘南ライナー」や快速・普通列車に充当された。

   1992年はまだバブルの余韻が残っていた時代。通勤の遠距離化が進んでいた中で、快適通勤の実現が課題であった。2階建てなので座席数は多く、列車の進行方向を向けるクロスシートが採用された車内は座って過ごす分には申し分ない。座席はフランス・コンパン社がデザインし、「DDL」(ダブルデッカーライナー)の愛称が車体につけられる程の力の入れようであった。データイムにも2階建てでちょっとぜいたくな移動を実現と、バブル末期の勢いが車両コンセプトにも反映されていた。

運用激減で持て余す存在

   ところが、2扉かつ2階建てで乗降に時間がかかること、10両編成でしか運転できないことから、停車駅の多い列車として運転すると遅延が発生しやすく、使いにくい車両となってしまった。

   またJR東日本の在来線では、113系・211系など従来の車両(3扉)からE231系・E233系の4扉へとドア数を増やし、スムーズな乗降に重点を置くようになった。この点でも215系はコンセプトを読み違えた中途半端な存在となり、4編成合計40両という少数派のために非効率な車両として持て余しがちになる。

   欧米や中国では2階建て車両が通勤通学輸送にも使われているが、日本の鉄道は本数も混雑率も海外とは比較にならないため、とにかく本数と定時性の確保が課題の日本では、遅れやすい2階建て車両は一般客の輸送には不向きという結果も215系は示した。

   2000年代になると東海道線の普通列車からは撤退、平日朝夕の「湘南ライナー」「ホームライナー小田原」「おはようライナー新宿」と中央線の休日の臨時快速「ホリデー快速ビューやまなし」しか運用がなくなってしまった。「ビューやまなし」は春から秋にかけての運転で、シーズンオフの休日は出番がなく、平日も数本の列車しか運用が無いため、大半の時間帯は車両基地に留置されているだけで、一部の鉄道ファンから「ニートレイン」のあだ名で呼ばれることも。

   3月13日の改正で「湘南ライナー」系列の運用が全てなくなり、215系は定期列車での出番が全てなくなることになる。ダイヤ改正後に「ビューやまなし」などの臨時列車での運用につく機会がなければ本当に「ニートレイン」となってしまうが、定期運用の消滅とともに廃車となってしまうか、行楽客輸送で再び活路を見出すかが気にかかるところだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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