新型コロナウイルスは風邪の一種だと主張し、国交省やJR東日本のお知らせとして、マスクを外すよう東京都内の駅前の街宣活動で呼びかける動画がツイッターに投稿され、物議を醸している。
国交省では、「こちらの名前を出す行為は非常によろしくない」と言い、JR東日本も、「マスクを外すよう案内していない」と言う。弁護士は、ウソをついたことになるとして、偽計業務妨害罪に問われる可能性があると指摘している。
国交省やJRの名前を出したことに「こんなことして大丈夫?」
「はい、国土交通省からのお知らせです。えっ、マスクを外して下さい。マスクを外しましょう。マスク要りません」
JR新宿駅前とみられる場所で、男性が拡声器を持って上の通路から道行く人々にこう訴える。動画では、「国土交通庁」とも聞こえる。
これは、ツイッター上で2021年3月1日に投稿された40秒ほどの動画の冒頭部分だ。
男性はまた、「電車に乗るときは、マスクを外しましょう。そして、電車の窓が開いていたら、閉めて下さい」「えっ、フェイスシールドなんか要りませんよ」と呼びかけ、国交省からのお知らせだと連呼した。
さらに、「JR東日本からのお知らせです」として、マスクを外すよう再三、道行く人々に訴えた。これに対し、男性のいる通路を見上げる人もいたが、マスク外しに応じる人は見当たらなかった。
この動画は、9日夕までに20万回以上も再生され、波紋を広げている。その主張に共感する声も一部寄せられたが、国交省やJRの名前を出したことに「こんなことして大丈夫?」などと疑問や批判が相次いでいる。
このツイッターアカウントでは、同じ男性とみられる人が他の場所などでも街宣する動画がアップされている。
国交省「『方針変えたんですか?』と問い合わせが数件来た」
その動画では、「厚生労働省のサイトも、ちゃんと読んで下さい。この新型コロナウイルスは、風邪の一種であると書いてあります」などと主張していた。
各地で街宣したとみられる男性は、いくつかの動画の中で、「コロナなんてウソなんだ」とし、ワクチンは危険だとして止めるよう訴え、都庁前では、緊急事態宣言の再延長に反対して小池百合子都知事に拡声器で抗議していた。
国交省の危機管理室では3月9日、J-CASTニュースの取材に対し、マスクを外すなどの呼びかけについて、「当然していません」と答え、次のように話した。
「いろんなお考えがあり、それについてどうこう申し上げませんが、こちらの名前をかたるのは、非常によろしくないですね。一般の方から、『方針変えたんですか?』と問い合わせが数件来ており、ユーチューブで動画を見て内容を承知していました」
ただ、男性側に抗議などするかについては、「影響が広がるようであれば、ありえますが、現時点では考えていないです」とした。
JR東日本東京支社の広報課でも9日、「マスクを着けるように案内しており、外しましょうと言っていることはありません」としたうえで、次のように取材に話した。
「駅に確認しましたが報告はなく、事象を把握できていませんので、会社としてコメントのしようがないです」
また、厚労省のコロナ対策本部広報班では、「新型コロナウイルスは、風邪の一種ではないと考えており、公式サイト上でもそのような記載はしていません」と取材に答えた。
「偽計業務妨害罪に当たると思います」
国交省やJR東日本などをかたってマスクを外すよう街宣活動をしたことについて、元東京地検検事の大澤孝征弁護士は3月9日、取材にこう指摘した。
「虚偽の内容を言って、国やJRなどの機関が推進している業務を妨害していますので、偽計業務妨害罪に当たると思います。信念を持つことは自由ですが、ウソであることが分かりきっていますから。国土交通庁などと言っていたとしても、その罪に含まれてしまうでしょう」
動画が証拠になるといい、警察が認知して立件するため、国などの告訴は必要がないともした。
「偽計業務妨害罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金になります。略式起訴して罰金もありえますが、模倣犯が出る恐れがありますので、一罰百戒のために、検察が公判請求することも考えられるでしょう」
J-CASTニュースでは、動画を投稿したツイッターアカウントにも取材依頼しており、9日20時30分現在でまだ連絡は来ていない。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)