英タイムズ紙「日本は止まらない暴走列車だ」
英ロンドン・タイムズ紙(3月3日付)が「It's time to cancel this year's Olympic Games」(今年の五輪大会を中止するべき時だ)という主見出しをつけ、アジア編集長のリチャード・ロイド・パリー氏のコラムを掲載した。主見出しの下には「日本だけではなく世界へのリスクが大きすぎる、東京の今夏のスーパー・スプレッダー(大量感染を引き起こす患者集団)・イベント」という見出しが付けられている」
1995年から東京に住み、日本の事情に精通しているパリー氏はこう主張した。
「英国で50年の歴史を誇り、約15万人を動員する野外音楽祭『グラストンベリー・フェスティバル』が(コロナによって)2年連続で中止されている。一方で、東京五輪は200カ国以上から1万5000人以上の選手が参加、その数倍の審判、スポンサー、報道陣らが来日、チケット販売数は1100万枚以上になる」
と数字を列挙。2つのイベントを対比させて、
「はるかに小規模で短期間のフェスティバルが犠牲になるならば、世界最大の都市で4週間にわたって開催される大規模イベントも中止されるべきであることは明らか。新たに変異ウイルスが急増し、五輪が感染源となって世界に数週間、数カ月間の停滞をもたらすかもしれない」
とバッサリ切った。
そして、菅義偉首相が「東京五輪を人類が新型コロナに打ち勝った証とする」と述べた発言を引用しつつ、
「五輪開催者は、勇気や人間性、抽象的な美徳を語るのを好むが、本当に開催したい理由はもっと実務的だ。すでに投入された莫大な資金と密接に絡み合った威信や権力だ。中止すれば五輪スポンサーである世界の大企業に損害があり、何年もかかる法的な議論になる」
と指摘。こうして何が何でも五輪開催へと向かおうとする様子を「止まらない暴走列車」と例えたのだった。
また、3月6日には「東京五輪中止」を求める市民たち約70人が、東京・新宿の日本オリンピック委員会(JOC)が入るビル周辺で抗議デモを行ったが、ロイター通信などいくつかの海外メディアも報じた。
ところで、下村博文・自民党政調会長は「主力国の選手が来ない」可能性について言及したが、「主力国」の国民は東京五輪の開催をどの程度望んでいるのだろうか。