2021年3月7日夜、「愛ちゃんの死」というワードがツイッターでトレンド入りした。不穏な雰囲気を感じさせるワードだが、「愛ちゃん」は宝塚スターの愛称、「死」は役柄であり、ネット配信での好演ぶりが大きな反響を呼び起こしていた。
しかし、「愛ちゃんの死」というワードがトレンドの上位に登場したことで、「どの愛ちゃんが死んだの?」「びっくりした」と宝塚ファン以外のユーザーも反応して、さらに話題が大きくなった。
セリフなき「死」の好演
宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)では2月14日から3月29日まで星組公演「ロミオとジュリエット」を上演しているが、その公演が3月7日に動画配信サービス「タカラヅカ・オン・デマンド」により生配信された。
話題の「愛ちゃん」とは星組男役スターの愛月ひかるさんで、この公演では役替わりで主人公ロミオの恋敵ティボルト(A日程)と、死を擬人化した役の「死」(B日程)を演じている。セリフはなく、ダンスと演技で劇中の人間たちを翻弄する役だ。
3月7日の配信はB日程で、愛月さんの死の好演ぶりが視聴者の心をつかみ、感想を投稿する中で「愛ちゃんの死」という意味ありげなワードになったことがさらに反響を大きくした。「存在感がすごかった」「トート閣下(『エリザベート』でのトップスターの役)のよう」「B日程のチケット取らなかったの後悔」「B日程円盤(BD)化してくれ」といった感想も。
愛月さんの「死」は記録に残りにくい役であることも言及しておきたい。「ロミオとジュリエット」はA・Bの2パターンの配役で上演されるが、オフィシャルな出版物や映像ソフトに収録されるのはAパターンがメインになる。宝塚大劇場公演は初日・千秋楽共にAパターンで、「サブ」的なBパターンを多くの視聴者に印象付けたことも大きい。
コロナ拡大以降、宝塚歌劇は「タカラヅカ・オン・デマンド」を通じて公演の配信に積極的だが、これほどの反響となったのは珍しい。「ロミオとジュリエット」は今後も配信予定があるが、いずれもAパターンの配信。一度だけのBパターンが、劇場の外のファンにもくっきりと記憶に残ったようだ。