ゲーム専用のパソコンやマウスなど、いわゆる「ゲーミング」用品の専用ブースを設ける家電量販店が増えている。
ビックカメラグループの広報担当者によれば、ここ数年ゲーミングパソコンをはじめとしたゲーム関連機器の売り上げは急増している。また、ソフマップではここ2~3年の間にほとんどのパソコン売り場にゲーミングブースが設けられた。
そこでは、いったいどんな商品を取り扱っているのか。J-CASTニュースは、ゲーミングデバイスの最新事情を取材した。
そもそも、ゲーミングデバイスの定義とは?
黒を基調とした空間に、鮮やかな刺し色が光る電子機器が並ぶ。ディスプレイにはゲームのプレイ映像などが写されている。
J-CASTニュース記者が訪れたのは、ソフマップAKIBA2号店パソコン総合館。案内してくれた店長代理・藪田大輔さんによると、ソフマップでは、ゲーミングPC(パソコン)、ゲーミングマウス、ゲーミングディスプレイ、ゲーミングキーボード、ゲーミングヘッドセット、ゲーミングチェアなどを扱っているという。
従来のパソコンやマウスなどとの違いはあるのか、藪田さんに尋ねた。
「ざっくり言えば、PCに関してはビデオカードかグラフィックボードが内蔵されたものがゲーミングPCです。これは3Dの画像を動かすためのもので、無ければゲームのプレイができません。
ディスプレイについては、1秒間に何枚の絵が動くかという『リフレッシュレート』が144以上のものをゲーミングディスプレイと呼称します」
一方、マウスやキーボード、ヘッドセットなどについては、ゲーミングデバイスとそれ以外を分ける定義は存在しないという。高性能なもの、例えば、仕事用の丈夫なキーボードやマウス、配信者用の高機能なヘッドセットなどがゲーム用に転じていることなどがその理由だ。
しかし、決まった定義のないマウスやキーボードであっても、「ゲーミング」と称するものには一定の傾向がある。
藪田さんによれば、その要素は「ゲームのトレンド」によって変遷するという。ゲーミングマウスを例に見てみよう。
マウスは「光る」から「軽量化」へ
「『光るものがゲーミング』という風に認識されることが多いかと思いますが、ゲーミング機器のトレンドも日々、変わってきています。例えば今ゲーミングのマウスについては非常に軽量化が進んでいます」
eスポーツが盛り上がり大会や配信文化が広がる中で、さまざまなカラーに光る「RGB機能」が搭載されたマウスが注目を集めていた。ただ、現在ソフマップAKIBA2号店で人気のゲーミングマウスは、光らないタイプだ。
藪田さんはロジクール社製の「PRO X SUPERLIGHT ワイヤレス ゲーミングマウス」を紹介した。その重量はなんと63グラムしかない。
「これはうちには限らず、ものすごく売れている商品です。しかし、いわゆる光る機能『RGB機能』はついていません。軽量化を優先するために、なくなっていったんですね」
藪田さんは「ゲームのトレンドがゲーミングデバイスの在り方も変える」と指摘する。
例えば、リーグ・オブ・レジェンズのような「ストラテジーゲーム」、ファイナルファンタジーシリーズのような「ロールプレイングゲーム(RPG)」が大流行した2000年代は、色々な機能を割り振ることができるも多ボタン式のマウスや、細かな動きを正確に感知させるために重量を変えられるマウスが脚光を浴びた。
しかし現在は「FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)」が台頭してきた。自身が操作するキャラクターの視線でシューティングを行うゲームで、自身の手とカーソルの動きが近く、大きな手の動きを感知できるものが求められた。その中で、長時間のプレイも楽しめる軽量のマウスが人気を博してきた。
プレイヤー層が拡大した理由は
さて、記事冒頭でも紹介したビックカメラグループの広報担当者によれば、こうしたゲーミングデバイスの販売数は増加傾向にある。現在は、ビックカメラやコジマの一部店舗でも、ゲーミング専用ブースの導入が進められているという。
ゲーミングデバイスの人気が高まっている理由として、担当者はeスポーツの広がりを指摘した。
「日本は据え置きゲームが主流で、パソコンを使ってゲームをするというところに関しては海外と比べると若干遅かったのかなという印象があります。しかし国内でもeスポーツの大会が開かれるようになり、eスポーツ人口が増えてきました。
皆さんは、例えば野球をしたいとなったらグローブとかバットを買いますよね。それと同じように大会に触れて、eスポーツを始めたいと感じた人々の間で、それに必要なゲーミングパソコンやデバイスなどの需要が高まっております」
また、ソフマップの藪田さんによれば、ゲーミングデバイスなどの客層は若年層にも広がっているという。
「お子様、親子連れ、若年層、特に中高生のお客様はものすごく増えていますね。家庭用ゲーム機からステップアップしてプレイしたいお子さんは多いですし、親世代もゲームに親しんでいるのでプレイさせてあげたいという方も多いようです」
若年層が増加した背景には、人気タイトルの登場があるという。
「これまでも『レインボーシックス』や『コールオブデューティー』などの人気タイトルがありましたが、いわゆる『戦争ゲーム』で子供が参入するには難しかったようです。
しかし昨今は、『フォートナイト』や『エーペックスレジェンズ』が台頭してきました。これらはシューティングゲームではありますが、サードパーソン・シューティングという第三者目線のゲームです。今までのリアルな戦争ゲームではなく、キャラクターが戦うポップなものとなっていることや、バトルロイヤル制が受けたことなどから、お子様にも広がっていきました」
大人から子供まで、たくさんの人々の間でコンピューターゲームが広がっている。先ほどのマウスの話にもどると、いま人気の軽量マウスはやはり子供や女性にも人気が高いとのこと。
プレイヤー層の広がりが、人気のゲーミングデバイスの特徴に変化を与えている、とも考えられそうだ。
秋葉原を「eスポーツの聖地」に
ビックカメラグループの広報担当者は、こうした状況を受けて秋葉原をeスポーツの聖地にしようと試みているという。
「eスポーツを多様な形で応援したいという思いから、スタジオや物販スペースなどをソフマップAKIBA2号店に設けました。スタジオでは配信用の動画撮影やイベントの実施も可能です。あとはeスポーツのチームが地方から上京した際に、練習場所や最終調整用の場所としても活用していただいております。物販スペースでは、スポーツ同様にプロチームのグッズを販売しております。
またeスポーツ選手の活躍祈願やeスポーツに関する願い事を祈祷できるコーナーもあり、有名選手のものもございます。このようにまさに『秋葉原をeSportsの聖地に』しようと取り組んでおります」
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)