スターシステムに気をもむファン
宝塚歌劇団では、独特のスターシステム、そして生徒(劇団員のこと)の序列に基づいたシステムで舞台を作っている。各組で主役を演じる男役トップスターとトップ娘役を筆頭に、2番手・3番手と序列に基づいて役の比重も決まっていく。トップコンビは一度就任すると退団まで主演を続け、退団すると別のスター格の生徒が就任する。
ところが、生徒の起用は基本的に「年功序列」で、トップ以下スター格はおおむね入団順が慣例。トップが退団すると次期トップは下級生から選ばれることが大半で、上級生が選ばれるケースは極めて少ない。一見同じスター級の生徒でも、上級生より下級生の方が役付きが良いとそこにファン同士の軋轢を生む要素がある。
また劇団から公式発表がなされるのはトップコンビだけで、2番手・3番手・若手スターといった位置づけはファンの間での暗黙の共有にすぎない。トップの退団発表から次期トップ発表まで数カ月のタイムラグがあることも、ファンが気をもむ一因といえる。
舞台のクオリティとともに、目下ファンが最も気にかけるのがこういった人事の噂話でもある。3月1日の劇団発表の通り、生徒の人事をめぐる噂は何年も前からネットで真偽不明の情報が入り乱れ、ゴシップとして消費されてきた。それらを根拠にトレンドブログのようなPV稼ぎを目的としたようなブログも散見される。この度の劇団の措置にも「誹謗中傷に法的措置は当然だとは思いますが、ファンの間で憶測が飛び交うのは、生徒さんの人事などについて透明性がなく、十分な説明責任を果たさない劇団側の姿勢にも問題があるのでは」というファンからの意見もネットには書き込まれていた。
生徒の序列が役の比重、退団後のネームバリューにも直結する。出番が多ければよりアンチファンの批判に晒されやすくなり、匿名のアカウントで「実力不足」といった批判を投稿するいわゆる「愚痴垢」もSNSでは無視できない。「2ちゃんねる(5ちゃんねる)」などの匿名掲示板でも以前から同様の行為は長年起こっていたが、SNSでより可視化されやすくなった今、劇団側も腰を上げ始めたようだ。
昨2020年には宝塚音楽学校で、本科生から予科生への「指導」といった長らく続いてきた不文律が廃止された。21年4月からは小川友次氏に代わって木場健之氏が歌劇団の新理事長に就任する。社会情勢に応じて、劇団のファンへの対応や、情報発信の姿勢も変わる兆しであろうか。
(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)