新型コロナウイルスのワクチンを接種した後について、献血は現状では当面の間できないと、日本赤十字社が公式サイトで明らかにして、戸惑う声も出ている。
接種後どのくらいの期間で献血できるかの基準については、厚労省が研究班の見解を元に検討している。輸血用血液などの確保にどう対応するのか、厚労省と日赤に話を聞いた。
日赤「国が基準を示すまでの間、献血はご遠慮いただく」
「新型コロナウイルスのワクチンを接種された方は、当面の間、献血をご遠慮いただいています」
日本赤十字社の公式サイトで、「献血をご遠慮いただく場合」についてこんな文面があったと、ツイッターで2021年2月28日に紹介され、その後、このツイートが拡散して話題になっている。
日赤サイトによると、ワクチンの接種について、インフルエンザなどは接種後24時間、おたふくかぜ、風疹などは同4週間、天然痘では同2か月、献血を遠慮してもらっているとしている。
コロナのワクチン接種については、2月22日になって、接種後の献血受け入れについて日赤サイトの血液事業トピックスで次のように説明があった。
「新型コロナウイルスのワクチンを接種された方の献血の受入基準につきましては、国において検討中の段階であることから、基準が示されるまでの間、献血はご遠慮いただくこととしておりますので、ご理解を賜りますようお願いいたします。なお、広く一般の方へ接種が開始されるまでに基準が決定する予定であり、決定しましたら、あらためてホームページ等でお知らせいたします」
前出のツイートでは、コロナのワクチン接種が進めば、献血する人が減ってしまう恐れもあるとして、ワクチンを打つ前に一度献血するよう呼びかけている。
厚労省「4月か5月には、接種後献血の基準を示したい」
日本での献血については、コロナ禍が拡大する中で、企業や学校での集団献血が少なくなって、一時危機的な状況になったと報じられている。
東京都赤十字血液センターの公式サイトで、2月26日~3月4日の献血状況を見ると、200、400ミリリットルの献血では「安心です」の表示が多い。しかし、成分献血では全血液型で「非常に困っています」となっており、依然として供給面で不安が残る状態だ。
厚労省では、接種後どのくらいの期間で献血できるかの基準作りを進めているが、現在の状況について、血液対策課の担当者が3月3日、J-CASTニュースの取材にこう説明した。
「国立感染症研究所の研究班に知見を求めており、2月24日に血液事業部会の運営委員会で、コロナワクチンの接種後、4週間は献血を制限するのが適当ではないかとの見解が示されました。これを元に再度検討することになります。研究班の成果を踏まえ、早ければ、4月か5月には検討した結果を示したいと考えています」
一般の接種が始まれば、一度に多くの人がワクチンを打って献血できなくなる事態も考えられるが、このことへの対応についてはこう話す。
「昨年の2、3月のように、多くの人が献血しなくなるのは困ります。対策を主に行うのは、日赤になりますが、我々としても、都道府県に協力依頼をするなどの対応を考えています」
「血液製剤の安定供給のためには、継続した献血協力が不可欠」
日赤の血液事業本部広報は3月4日、次のように取材にコメントした。
「新型コロナワクチン接種後の献血につきましては、国の審議会において、各国の知見や血液製剤の安定供給への影響等が検討されています。
献血受入基準については、国から基準が示されるまでの間は、接種した方の献血はご遠慮いただくこととしていますが、広く一般の方へ接種が開始されるまでに、基準が決定する予定です。
また、国内でのワクチン接種の進捗や献血受入れ基準も定かでないことから、現状では、血液の過不足等の見込みについてはお示しいたしかねます。
なお、当社では、全国を7つのブロックに分けた広域需給管理体制によって、滞りなく医療機関に輸血用血液をお届けできており、現在、逼迫しているということはありません。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染が続いているなか、有効期間のある輸血用血液製剤を安定的に医療機関へお届けするためには、継続した献血協力が不可欠です。 輸血用血液を必要としている患者さんの命を守るため、お一人でも多くの方に献血協力をいただけるよう呼びかけており、献血される方が一時期に集中することによる密集や密接を避けるため、また、日々必要な血液を安定的に確保するために献血における事前予約をお願いしています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)