小泉純一郎元首相と菅直人元首相が2021年3月1日、そろって東京・丸ノ内の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。「脱原発」という立場を共有する2人の元首相が、与野党を超えて持論を展開した。
2人は、風力などの再生可能エネルギーの供給を増やすことで、原発を廃止しても電力需要をまかなえるとの立場。今でも原発推進に賛成する人がいることについて「理解できない」との意見では完全に一致したが、東京電力福島第一原発の敷地内にたまる処理済み汚染水の問題では、若干の温度差もにじませた。
「今のご質問ねぇ、私もそう思ってるんですよ」
2人の意見が完全に一致したのは、会見中盤で出た質問に対する答えだ。質問は、
「原発や原発周辺に行くと、いかにひどい事故であったかが、誰でも分かると思う。それでも日本全国、あるいは福島県でも、原発推進派の方は、いまだに残っている。なぜ、この事故の影響を受けた全ての日本人は、原発反対派にならなかったのか」
というもので、小泉氏は「今のご質問ねぇ、私もそう思ってるんですよ」と反応。記者と同様、国内に推進派が残っていることを疑問視した。
「ドイツは、あの日本の福島の事故を見てゼロに踏み切った。日本は、あの事故を目の当たりにしながら、悲惨な...。まだやろうとしている。これ、理解できないですね。不思議でしょうがない。やればできるのに、なぜやらないのか」
発言を求められた菅氏は「全く同意見です」と一言。会場からは笑い声もあがった。
「出来ることなら他の方法で処理すべき」でも「他の方法もなかなか難しい」
汚染水処理問題への答えでは、若干の違いが出た。汚染水をめぐっては、大半の放射性物質を除去し、除去が難しいトリチウムを海水で薄めた上で海洋放出する方向で政府が最終調整を進めている。ただ、風評被害への懸念は根強く、全国漁業協同組合連合会は、海洋放出に断固反対の立場を鮮明にしている。
菅氏は汚染水の処理について、
「汚染水、トリチウム水のことで、私も色々な勉強会に出ている。やはりそれを流すと、風評被害で漁業者が非常に打撃を受ける可能性があるので、出来ることなら他の方法で処理すべきだと思っているが、他の方法もなかなか難しいということもよく理解しているが、基本的にはそのように思っている」
と話し、海洋放出以外の方法は現実的には困難だとの立場を示唆。一方で小泉氏は、何らかの形で時間稼ぎをして新技術を研究すべきだとした。
「福島の汚染水、これは、放水・放流すると、漁業者は反対ですからね。当分の間、どうやったら汚染水を反対のないような形で処理するかは、時間をかけて研究しなければいけない。どうやって保管するか、もあるから。いずれにしても地面にうずめるにしても、海に流すにしても、将来、どういう技術が出てくるか、議論・研究していかなきゃいけない問題とだと思っている」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)