脱原発「勘違いしていらっしゃる方も...」 枝野氏「やめるのは簡単じゃない」発言が紛糾した理由

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   立憲民主党の枝野幸男代表の「脱原発」の打ち出し方をめぐり、党内や支持者から賛否両論が噴出している。枝野氏は西日本新聞のインタビューで、「原発をやめるということは簡単なことじゃない」「政権の座に就いたら急に(原発ゼロを実現)できるとか、そんなのはありえない」などと、実際に原発をやめられるまでには相当な時間がかかることを説明した。

   この説明には「現実的」だとして評価する声がある一方で、立憲が政権を取れば速やかに原発がなくなることをイメージしていた支持者からは不興を買っている。枝野氏は、自らの発言は変化しておらず、「『何か宣言をすれば原発はゼロになる』と勘違いをしていらっしゃる方も、党の外にはいらっしゃる」と指摘。「誤解を恐れずに発信」して、引き続き理解を求めていきたい考えだ。

  • 定例会見で脱原発について説明する立憲民主党の枝野幸男代表(写真は立憲民主党の配信動画から)
    定例会見で脱原発について説明する立憲民主党の枝野幸男代表(写真は立憲民主党の配信動画から)
  • 定例会見で脱原発について説明する立憲民主党の枝野幸男代表(写真は立憲民主党の配信動画から)

党綱領「原発ゼロ社会を一日も早く実現」との整合性は

   波紋を広げているインタビューは、「『原発をやめるのは簡単じゃない』枝野氏に聞く」の見出しで2月14日に西日本新聞のウェブサイトに掲載された。その中で枝野氏は、今後の原子力政策について、使用済み核燃料の再処理がフランスで行われていることを念頭に、次のように発言している。

「原発の使用済み核燃料の行き先を決めないことには、少なくとも原子力発電をやめると宣言することはできません。使用済み核燃料は、ごみではない約束で預かってもらっているものです。再利用する資源として預かってもらっているから、やめたとなったらその瞬間にごみになってしまう。この約束を破ってしまったら、政府が信用されなくなります。ごみの行き先を決めないと、やめるとは言えない。でも、どこも引き受けてくれないからすぐには決められない。原発をやめるということは簡単なことじゃない」

   立憲は、綱領で「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します」とうたっている。この点との整合性については、

「使用済み核燃料の話は、政権を取ったとしてもたぶん5年、10年、水面下でいろんな努力をしない限り無理です。だから政権の座に就いたら急に(原発ゼロを実現)できるとか、そんなのはありえない」

と話した。

「何も変わっておらず、何もブレていない」

   枝野氏は2月26日の定例会見で、原発について「やめ始める」「やめ終わる」という表現を使いながら、「やめる」という方針は一貫していることを強調した。

   記者が

「ここで確認したいのは、政権の座についても、今稼働している原発を止めることは難しい、ということなのか」

などと質問している途中、枝野氏が割って入る形で「そんなこと全く言ってません」。その上で、次のように話した。

「我々が政権を取れば原発をやめる、ということについて、明確に始める。ただし、原発をやめる、原発をゼロにするというゴールはどこかと言ったら、実は100年単位。廃炉が終わって使用済み核燃料がどこかに安定的に保管されて初めて原発をやめた、と言える。やめ始めるが、実際にやめ終わるには大変な作業がいる。まず大きなハードルは使用済み核燃料だと思っているし、廃炉だって簡単に作業ができるとは限らない、福島に限らず。従って、やめ終わるには大変な、簡単じゃない、いろんなハードルがありますよ、と申し上げている。これは一貫して、ずっと申し上げている」

   党内から様々な声が出ていることについては、枝野氏は「何も変わっておらず、何もブレていない」とする一方で、原発をなくすまでのスケジュール感の説明には苦慮することになりそうだ。

「色々な受け止めがあり得るんだろうなぁ、党内外で...ということは思うし、誤解をされないように注意しないといけないと思うのが半分と、でも誤解を恐れず、言っていかなきゃいけない。『何か宣言をすれば原発はゼロになる』と勘違いをしていらっしゃる方も、党の外にはいらっしゃるというのは、この間の反応で感じているので、『そういう話じゃないですよ』『相当、やめ始めてからが大変なことなんだ』というのは、共有していただかないと...、『政権を取ったのに、稼働はしないでしょうが廃炉は進まないじゃないか』と言われても、そんな簡単な話じゃないですよね、ということは、それはやっぱり誤解を恐れずに発信しなきゃいけないと思っているので、そこのバランスを取っていきたい」

「選挙前の野党の指導者としては、ちょっと心得違い」との指摘も

   実際に、立憲支持者の受け止め方も複雑だ。山口二郎・法政大教授は2月23日収録の動画番組「デモクラシータイムス」の中で、西日本新聞のインタビューについて

「これね、ネットではすごく評判が悪いんですよ。『枝野は脱原発本気でやんないのか!』みたいな。批判する声がネットにあふれかえっちゃってて...。私は、ひたすら擁護。そりゃねぇ、『脱原発はそんなに簡単じゃないんだよ』、ということを枝野さんは言っているわけ」

などと枝野氏の意図を代弁。一方で、枝野氏の慎重な表現には、もどかしさものぞかせた。

「『色々難しい前提があるけど変えたい』というのと『是非変えたい。だけどこれこれ、こういう難しいハードルがある。それを乗り越える』。どっちの言い方をするのが政治家なのか、っていう...。枝野さんは今やっぱり、『色々難しいことがいっぱいありますよ、だけど私は方向性として変えていきたい』。誠にその何というか、リザーブド(reserved)というか、留保をたくさん置いた言い方をしているわけなんですが...、これはやっぱり選挙前の野党の指導者としては、ちょっと心得違い」

   路線の違いが指摘されていた国民民主党の玉木雄一郎代表は2月18日の記者会見で、

「ある意味、非常に現実的な発言、提案をなさっているので、その意味では、我が党の考えにかなり近い考えをおっしゃっている気がする」

と話し、インタビューでの発言を歓迎している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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