仙台市の郡和子市長が市議会の答弁で、福岡市に対して突然の「ライバル都市」宣言だ。
東京、大阪、名古屋の3大都市圏に次ぐ規模の都市を表す言葉として知られてきたのが、札幌・仙台・広島・福岡の「札仙広福」(さっせんひろふく)という言葉だが、議員の「札幌市や広島市は眼中にはありません!」という「煽り」に、市長も意気込みを見せた形だ。仙台市が念頭に置いているのが、福岡市の中心部で行われている大規模再開発プロジェクト。福岡市を追う形で、仙台市も「都心一帯の活力創出に注力を始めている」状況だ。
地方へのオフィス移転・増設に関心ある企業に候補地聞いたら...
「札仙広福」は1970年代後半頃から登場した言葉で、今でも基準地価のニュースで登場することがある。人口は札幌市(197万人)、福岡市(160万人)、広島市(120万人)、仙台市(109万人)の順に多い。
福岡市の話題は、2021年2月19日に行われた市議会2月定例会の一般質問で出た。質問した自民党の佐藤正昭議員は「今まで(仙台市は)世界一を目指すと激励してきたし、そうなってほしいとの考えは変わらないが、現実的に目標、ライバルが必要だと私は考える」と問題提起。続いて佐藤氏は、仙台市が20年11~12月に首都圏企業向けに行った意識調査の結果を紹介した。調査では、新型コロナの流行後に地方へのオフィス移転・増設に関心があると回答した企業は全体の27.7%にのぼった。移転候補地を7つの選択肢(仙台市、札幌市、新潟市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市)から複数回答で聞いたところ、福岡市が57.2%で最も多く、仙台市は49.8%で2番目だった。
佐藤氏はこの結果を受ける形で、
「私は、今や、札幌市や広島市は眼中にはありません!議員の皆様もいかがですか?福岡市だけが、唯一、本市のライバルたりえると考えます!」
などと主張。議場から笑い声が起こる中、市長の認識をただした。
「この際、市として福岡市を姉妹友好都市ではなく、ライバル都市に認定してはいかがでしょうか?」
郡市長は答弁で、福岡市を「アジアの玄関口として経済発展を続けている非常に勢いのある街」だとした上で、「ライバル都市」の提案にも至って前向きな姿勢を示した。
「私はいわばライバル都市として、その動きを注視していくとともに、多くの自治体が創意工夫による街づくりを進めている中で、これら国内の諸都市とも、その中でも競争に打ち勝っていくという強い覚悟を持っていく」
新規開業率の高さは「福岡市とその座を争うまでに成長」
福岡市は中心部の天神地区で、24年までの10年間でビル30棟を建て替えて店舗やオフィスの面積を増やす「天神ビッグバン」構想が進行中。仙台市も19年7月に「都市再構築プロジェクト」を発表し、都心部の老朽建築物建て替えを促している。30年度のプロジェクト完了を目指す。担当する高橋新悦副市長は、両都市のつながりについて
「古くは伊達家と黒田家の、江戸期の街造りからつながる歴史の中で、独自の文化を形成してきている」
とした上で、天神ビッグバンについて
「民間と行政が一体となったような形で民間ビルの建て替えを誘導しながら、新たな空間づくりや雇用の創出に取り組むなど、私の目から見ても、最も勢いのある都市だと感じている」
などと高く評価。新規開業率が政令指定都市の中で福岡市に次いで高い水準にあることなど、仙台市の取り組みもアピールした。
「新規開業率日本一を目指して取り組んできた結果、現在では福岡市とその座を争うまでに成長した。また、都市再構築プロジェクトを打ち出して、民間開発の誘導や、企業誘致、あるいは定禅寺通活性化など、都心一帯の活力創出に注力を始めている」
「本市固有の特性や強みを伸ばしながら福岡市を含め、どの都市にも負けない、人々から選ばれる都市を目指し鋭意取り組んでいきたい」
福岡市も「ライバル宣言」を受けて立つ構えのようだ。高島宗一郎市長は2月20日、市議会でのやり取りを報じる地元紙・河北新報の記事を紹介しながら、
「仙台の街も大好きです。私は東京一極集中の次は地方拠点都市の時代だと思います。ぜひ東西から日本を盛り上げましょう!」
とブログに書き込んだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)