「いつ買われる側に転じてもおかしくない」
今回を含め、売上高7000億円規模のルネサスが年商に匹敵する巨費を投じて買収を繰り返すのは、半導体業界で生き残りをかけた再編が進んでいるという背景がある。
20年後半だけでも、米中堅のマーベル・テクノロジー・グループが同業の米インファイを100億ドル(約1兆400億円)で買収すると発表(10月)、中央演算処理装置(CPU)大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が350億ドルで米ザイリンクスを買収すると発表(同)、米エヌビディアが最大400億ドルを投じ、ソフトバンクグループから英アームの株式を取得することで合意(9月)、米アナログ・デバイセズ(ADI)が約210億ドルでマキシム・インテグレーテッドを買収すると表明(7月)といった具合だ。
こうした大型案件には、米国による中国に対する先端分野での規制、具体的には華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の取引制限などで今後のビジネスへの不透明感が高まるなか、規模を拡大するとともに、米国企業などとの取引の比率を高め、政治リスクをヘッジしたいとの思惑があるとされる。
また、買収する側は株価の上昇を活用し、自社株との交換により低コストで買収を進めているのもほぼ共通する。
これに対し、ルネサスは規模、業績などで見劣りするのは否めない。韓国サムスンがルネサスを買収候補に挙げたとも報じられており、「捨て身ともいえる買収を続けるルネサスも、いつ買われる側に転じてもおかしくない」との声が業界関係者から聞こえる。