空間除菌などをうたう大幸薬品(本社・大阪市)の商品「クレべリン」をピアノのそばに置いたら、ピアノの弦がさびた――。コロナ禍の中で、ツイッター上でこんな情報が拡散している。
クレべリン設置と「さび」には関係があるのか、大幸薬品に詳しく話を聞いた。
「実験」の様子を報告する人も
ピアノの弦のさび付きについては、あるツイッターユーザーが2021年2月23日に投稿して注目を集めた。
このユーザーは、コロナ禍で宣伝を強める「空間除菌」グッズは本当に効果があるのか、と疑問視するネットニュースの記事を紹介した後、ピアノ調律師がクレべリンに注意を呼びかける3年前のブログを取り上げ、もう1つの参考として挙げた。
そのブログでは、グランドピアノを1年ぶりに調律すると、譜面台の下にある高音の一部の弦だけが異常にさびていたと、写真付きで報告した。客からクレべリンを譜面台の上に置いたと伝えられ、成分の二酸化塩素が隙間から弦まで下りてさび付かせたのではないかとして、クレべリンは、ピアノの部屋には置かず、特にピアノの近くはダメだと呼びかけている。
クレべリンによる影響については、他の音楽関係者も、ピアノの部屋に置いても換気に気を付けるようにと、ブログなどで注意を呼びかけている。実際に、ピアノの弦などとクレべリンをビニール袋にまる1日入れ、この実験で弦などの鋼鉄部分がさびた様子を報告していた人もいた。
大幸薬品サイトでは「よくあるご質問」の欄で、クレべリンの使用を控えた方がよい場所として、「製品の特性上、貴金属、精密機器の間近では使用しないでください。金属を腐食する可能性があります」と答えている。
大幸薬品「ピアノの金属部分が腐食する恐れはあります」
このほか、色物の繊維についても、漂白する可能性があるため、間近での使用は控えるよう呼びかけている。
ピアノの弦がさびるかについて、大幸薬品の広報部は2月25日、J-CASTニュースの取材にこう答えた。
「主成分の二酸化塩素には、酸化作用があり、ピアノの金属部分が腐食する恐れはあります。二酸化塩素は、空気より重いので、下に流れていきます。クレべリンは、ピアノから離れた棚の上などに設置するのがよいでしょう。その際でも、長期間不在にして、練習などの人の出入りのない密閉した部屋に置くのはよくないので、別の部屋にクレべリンを移動してもらえれば。パソコンやエアコンなどについても、クレべリンを通常の使用状態ならいいですが、心配なら離したところに置いてもいいでしょう」
クレべリンについては、コロナ禍の中で部屋などに置いているとのSNS投稿も目立っている。
とはいえ、消費者庁は2014年3月、二酸化塩素を発生させるグッズを部屋に置いたり首にかけたりするだけで「空間を除菌できる」とうたった宣伝には根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認など)に当たるとして、大幸薬品など17社に再発防止などを求める措置命令(行政処分)を出した。同社ではその後、クレべリンについて、「ご利用環境により、成分の広がりは異なります」といった注釈を付けるなどの対応をしている。
新型コロナに関連しては、「よくあるご質問」サイトで、「日用雑貨品のため、特定ウイルス・菌、疾病等に対する効果・予防等を謳うことはできません」と説明している。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)