今回の接待問題、組織ぐるみという点ではかなり悪質
筆者は、国家公務員倫理法の施行時に海外にいたので、帰国したら浦島太郎になると思い、国家公務員倫理法・倫理規定の資料を何度も読み返した記憶がある。
国家公務員倫理法の施行により、かつての接待はなくなったとされていたが、今回の総務省接待問題は、それに反し組織ぐるみという点ではかなり悪質だ。
しかも、自腹を切らないという点でセコい。今回総務省の処分を退職後ということで免れた人もいるが、飲み会の誘いは断らないということで有名だという。毎回自腹で断らないなら立派だが、おごってもらう接待を断らないというなら、何を言っているのかわけわからない。
ある人は、本件は贈収賄の可能性があるので、菅首相の息子にも責任があるといっていた。総務省内部調査では、一人当たりの接待額は10万円程度なので、100万円というかつての相場ではないといっても、これで贈収賄の立件は難しいだろう。
ある人は、首相の息子に誘われたら官僚は断れないと批判したが、利害関係者であっても会食がいけないのではない。おごってもらう接待がいけないのであって、自腹で割り勘であれば事後に会食事実を役所に報告しておけばいい。
処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世は難しいだろう。ただ飯が高くついた。今回処分を受けた者の中には、一部自腹を切っていたが、なぜ全額自腹にしなかったのかを悔やむだろう。そして、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しい。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職できるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。