モンスター田嶋と出光が組んだ 超小型EVの潜在力とは

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   出光興産は、モータースポーツ参戦車両の開発などを得意とする「タジマ モーターコーポレーション」(田嶋伸博・会長兼社長)と超小型電気自動車(EV)など次世代車を開発すると発表した。出光興産の参入で、国内で超小型EVの開発競争が加速しそうだ。

   専門の新会社「出光タジマEV」を2021年4月に設立し、代表には田嶋氏が就任する。新会社はタジマモーターの既存の関連会社「タジマEV」に出光興産が出資し、商号を変更する。

  • 開発中の小型EV(2019年東京モーターショー展示車両)=出光興産のプレスリリースより=
    開発中の小型EV(2019年東京モーターショー展示車両)=出光興産のプレスリリースより=
  • 開発中の小型EV(2019年東京モーターショー展示車両)=出光興産のプレスリリースより=

2022年の発売を目指す

   出光タジマEVの超小型EVは10月に発表し、2022年の発売を目指す。超小型EVをめぐっては、トヨタ自動車が20年12月25日から法人や地方自治体などに限定販売している。国土交通省がその前の9月に超小型EVの新たな規格を発表しており、出光タジマEVはトヨタに続き、この規格に準拠した超小型EVを開発する。

   出光興産が組むタジマモーターは、全日本ダートトライアル選手権、国際ラリー、国際ヒルクライムなどで活躍した田嶋氏が会長兼社長を務める。田嶋氏は「モンスター田嶋」の異名をとる人気ドライバーで、1988年から米国のパイクスピーク・ヒルクライムに参戦。95年には日本人初の総合優勝を果たすなど、モータースポーツの分野では国際的に有名だ。

   その田嶋氏がモータースポーツ参戦車両を製作する「モンスターインターナショナル」を設立したのが1983年。2005年にタジマモーターコーポレーションへ社名変更。12年には田嶋氏がパイクスピーク・ヒルクライムに自社開発のEVレーシングカーで参戦するなど、近年はEV開発に意欲的で、18年にEVを企画・設計するベンチャー企業「タジマEV」を設立していた。

   モータースポーツのイメージが強いタジマモーターだが、出光興産と開発する超小型EVは地域コミューターとなりそうだ。田嶋氏は2月16日の発表会見で、「きっかけになったのはWRC(世界ラリー選手権)への参加経験」として、アイスバーンに覆われた道を使用して毎年1月に開催されるモンテカルロラリー(モナコ)の雪と氷のコース状況が毎年変わっていることに、「気象が異常に変化していることを痛感した」と、温暖化への危機感を強調した。

リサイクルシステムの開発も

   他方、出光興産はこれまで岐阜県飛騨市、高山市、千葉県館山市、南房総市で超小型EVの実証実験を行い、女優の長澤まさみさんが登場するテレビCMなどで紹介してきた。2年間の実験の結果、地方都市などでは日々の買い物や子供の送迎などで「自転車や原付バイクに代わる安全な移動手段に対するニーズがあることがわかった」という。軽自動車が生活の足として普及しているが、運転経験が浅いドライバーや高齢者など運転に不安をもつ層があるということだ。

   そこで、出光タジマEVは、既存の軽自動車より一回り小さく、小回りがきいて最高時速60キロ以下の低速で走行する超小型EVに狙いをつけた。「運転に不安を感じる高齢者や運転に不慣れな層にも安心して利用してもらえる」と説明する。超小型ながらも乗車定員を軽と同じ4人とし、超小型EV全体で年間100万台の需要を見込んでいるというから、驚きだ。

   出光タジマEVは超小型EVの開発・販売だけでなく、(1)車載ソーラーや次世代バッテリーの採用(2)自動運転開発(3)新たなサブスクリプション(定額サービス)やカーシェアモデルの展開(4)MaaS(さまざまな形態の輸送サービスを統合して一つのサービスとして運用すること)に関するデジタルプラットフォームの構築(5)リサイクルシステムの開発――なども進めるという。

   いずれも出光興産が狙う脱石油のビジネスモデルで、「モンスター田嶋」と組み、狙い通りの開発が進むか注目される。

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