新型コロナウイルスのワクチン接種開始を受け、日本ワクチン学会は2021年2月23日、「接種後に生じた好ましくない事象というだけで、因果関係の検証もないままにさも本 ワクチンとその接種が危険であるかのような騒ぎ方、煽り方は厳に慎まなければなりません」などとする声明を発表した。
副反応の評価は冷静に
声明では、日本で医療従事者への先行接種が始まった米製薬大手ファイザー製の「mRNA ワクチン」について、
「イスラエルなどにおいて、臨床現場で使用されて発病や死亡を阻止する顕著な効果が認められており、接種率が十分に高まれば COVID-19 の制圧に寄与していくことが期待されます」
と評価する。2月22日までの4日間で計1万1934回の接種を行い、20日に副反応の疑いが2件(じんましん、悪寒)厚生労働省に報告されているとして、「接種との因果関係を否定できませんが、過去の経験や治験のデータから想定される範囲内の重症度およびその発生頻度であると、現時点では考えられます」 と考察する。(※22日に「脱力(手足が上がらない)、発熱」の症例が新たに報告された)
今後の見通しについては次のような見解だ。
「今後の接種数の増加に伴って、副反応であることが疑われる様々な事象の発生が見込まれます。迅速かつ正確な情報の開示と共有に努め、想定される範囲内のものなのか、本ワクチンに特有のものなのか、随時慎重に、しかし可及的迅速に判断していく必要があります」
「副反応が疑われる事例として、死亡を筆頭に、アナフィラキシーなどの重篤なものも報告されてくることが想定されます。接種による副反応なのか、接種後に起きたという時間的な前後関係はあるが接種と因果関係のない偶発的な事象、いわゆる『紛れ込み』なのか、科学的に検証した上で本ワクチンの安全性に関する解釈を進めていかなくてはなりません」
ワクチンのリスクが報道などで伝えられ、一部では警戒感も広がっている。声明では、ワクチン忌避につながるような過剰な"恐怖訴求"に警鐘を鳴らす。
「接種後に生じた好ましくない事象というだけで、因果関係の検証もないままにさも本ワクチンとその接種が危険であるかのような騒ぎ方、煽り方は厳に慎まなければなりません。本ワクチンの有効性が十分に高く、COVID-19 を制圧する可能性があるとすれば、それを実現できるかどうかは行政機関からの迅速かつ正確な情報の開示に加え、その内容のメディアによる偏りのない報道が成否のカギを握ると考えられます」
最後は、
「ワクチンを接種する目的は感染症を制圧し、国民の健康を保持することであることに鑑み、その有効性を期待しつつ、並行して慎重に安全性を評価しながら、国を挙げて着実に接種の積み重ねをしていく姿勢が肝要です」
と締めくくっている。