今年放送するテレビアニメ「鬼滅の刃」の第二期「遊郭編」をめぐり、「炎上」騒動が起きているという。一部スポーツ紙が報じた。
報道によれば、物語の舞台が遊郭のため、SNS上では子供への悪影響を懸念する声や、女性差別との指摘が上がっている。
実際にこうした意見はどれくらい書き込まれているのか。検証した。
「遊郭を子供にどう説明すればいいのか」
大人気漫画「鬼滅の刃」の続編アニメが2月14日に発表された。今年中の放送を予定する。
「遊郭編」は原作の9~11巻に該当し、主人公らが吉原遊郭に棲む鬼を討伐する任務に挑む。同舞台は作中で「愛と女の見栄と欲 愛憎渦巻く夜の街」などと紹介されている。
しかし、続編の発表後、SNS上では「『炎上』と騒ぎになっている」という。
デイリースポーツの2月20日付ウェブ記事「鬼滅 次回作『遊郭編』で炎上騒ぎ...論争『遊郭を子供に』『女性差別』『過剰反応』」によれば、アニメの舞台をめぐって「遊郭を子供にどう説明すればいいのか」「遊郭は子供に悪影響」「女性差別」といった意見が飛び交っているという。
一方、「遊郭という言葉に過剰反応」「遊郭炎上は本当に意味不明過ぎる」との声もあり、論争が勃発しているというのだ。
記事は大きな注目を集め、関連ワードが軒並みツイッターのトレンド入りした。配信先のYahoo!ニュースでは、7500件以上のコメントが書き込まれた。
東スポウェブも同日、「鬼滅の刃新作めぐる議論で『炎上騒ぎ』がトレンド入り 森喜朗〝失言〟の影響も」の見出しで報じ、
「このところ東京五輪組織委員会の森喜朗前会長の〝女性蔑視〟発言や、橋本聖子新会長の過去のセクハラ報道などが連日報じられたこともあり『世の中がその手の話にピリピリしている面もある』(関係者)という指摘もあるが、果たして...。」
と分析している。
一連の報道に対しては、「そんなに炎上してたのか...」との戸惑いや、「炎上の件で色々ワニ先生(作者の吾峠呼世晴氏)の表現がカットされた場合、この作品のファンはものすごく悲しい」と不安がる声が寄せられている。
なぜ炎上と映ったのか
一般的に、ネット炎上は「批判が殺到する事態」を指す。「インターネット上で、記事などに対して非難や中傷が多数届くこと」(『広辞苑 第七版』岩波書店)、「ある人物や企業が発信した内容や行った行為について、ソーシャルメディアに批判的なコメントが殺到する現象」(『ネット炎上の研究』勁草書房)などと定義される。
「遊郭編」は、そのような事態になっていたのか。SNS分析ツール「ソーシャルインサイト」で2月14日~19日の期間、「鬼滅」「遊郭」を含んだツイート約34万件を感情分析すると、ポジティブな反応が25.2%、中立が70.9%、ネガティブが3.8%だった(円グラフ参照、以下同)。
ネガティブな反応に含まれる主な単語は「子供」「悪い」「遊女」「場所」「酷い」など。作品から切り離した形での遊郭の批評や、批判に対する皮肉めいた書き込みも一部含まれており、実際はより少ないとみられる。
もっとも、炎上が起きたとの認識はある程度共有されていた。「(鬼滅 OR 遊郭編) 炎上」を含むツイート数の推移を調べると、16日に大きな山ができている。
ネタ系インフルエンサーやまとめサイトが、「放映前から(中略)叩かれまくる」「(一部の層が)大騒ぎ」と批判的な意見を仰々しく取り上げ、それに反論が続出した格好だ。1万5000以上リツイートされた反論投稿もあり、炎上騒ぎに映った人が少なくなかったとみられる。
その後、盛り上がりは消沈していったが、20日の記事をきっかけに再燃した。
遊郭の描写に対して議論が起こったのは事実だったが、必ずしも批判が殺到しているとまでは言い切れなさそうだ。当然、否定的意見が比較的少数だからといって無視されるべきではないが、厳密に考えて「炎上」と言えるかどうかは議論の余地がありそうだ。