なぜ炎上と映ったのか
一般的に、ネット炎上は「批判が殺到する事態」を指す。「インターネット上で、記事などに対して非難や中傷が多数届くこと」(『広辞苑 第七版』岩波書店)、「ある人物や企業が発信した内容や行った行為について、ソーシャルメディアに批判的なコメントが殺到する現象」(『ネット炎上の研究』勁草書房)などと定義される。
「遊郭編」は、そのような事態になっていたのか。SNS分析ツール「ソーシャルインサイト」で2月14日~19日の期間、「鬼滅」「遊郭」を含んだツイート約34万件を感情分析すると、ポジティブな反応が25.2%、中立が70.9%、ネガティブが3.8%だった(円グラフ参照、以下同)。
ネガティブな反応に含まれる主な単語は「子供」「悪い」「遊女」「場所」「酷い」など。作品から切り離した形での遊郭の批評や、批判に対する皮肉めいた書き込みも一部含まれており、実際はより少ないとみられる。
もっとも、炎上が起きたとの認識はある程度共有されていた。「(鬼滅 OR 遊郭編) 炎上」を含むツイート数の推移を調べると、16日に大きな山ができている。
ネタ系インフルエンサーやまとめサイトが、「放映前から(中略)叩かれまくる」「(一部の層が)大騒ぎ」と批判的な意見を仰々しく取り上げ、それに反論が続出した格好だ。1万5000以上リツイートされた反論投稿もあり、炎上騒ぎに映った人が少なくなかったとみられる。
その後、盛り上がりは消沈していったが、20日の記事をきっかけに再燃した。
遊郭の描写に対して議論が起こったのは事実だったが、必ずしも批判が殺到しているとまでは言い切れなさそうだ。当然、否定的意見が比較的少数だからといって無視されるべきではないが、厳密に考えて「炎上」と言えるかどうかは議論の余地がありそうだ。