三菱のPHEVは「走る蓄電池」
三菱自動車では、先述にもあった「DENDOコミュニティサポートプログラム(災害時協力協定)」の輪を広げようと力を入れている。県や市などの自治体と締結し、災害時に販売会社等を通してPHEVを被災地に派遣するシステムだ。
このプログラムは、千葉県での支援活動の直前となる19年8月末に正式に発足し、金子さんは事務局長を務めていた。協定発足直後の9月9日はまだ千葉県内の自治体と締結していなかったが、金子さんらはアウトランダーPHEVとともに現地へ向かった。
館山市で携帯充電エリアを設置(提供:三菱自動車)
金子さんらに、千葉での経験を通して何を感じたのか、改めて振り返ってもらった。
「今回感じたのは『いかに初動を早くするか』ということです。もっと早く動けていたら、さらに多くの人をサポートできたかもしれません。特に停電に対してサポートできる車は、早いタイミングでの支援が有効だと思いました」(金子さん)
こうした背景もあって、三菱自動車では災害時により迅速に対応できるよう、平時から災害時のサポート体制を確立することが必要だという考えを深めている。
三菱自動車では、事前の協定がない場合にも、要請があれば災害発生に伴う車両の派遣支援を検討・派遣しているが、「DENDOコミュニティサポートプログラム(災害時協力協定)」を締結することで、より迅速な対応が可能になっている。
締結先の自治体と三菱自動車との間で、複数の緊急連絡先を交換しており、PHEVの特長、貸与手続きの方法、事故発生時の取り扱いなどを事前に確認している。それによって有事の際にスムーズに連絡を取り合い、これらの説明に使われる時間ロスが省けるため、発災前の締結を推奨している。
「サポートにおける出動体制は状況に応じていろいろなパターンがあると考えています。基本的には車両の貸し出しを想定していますが、被災地の皆さまのニーズに応じた、柔軟な支援をしていきたいと考えています」(金子さん)
災害時の初動を早くするためにも、DENDOコミュニティサポートプログラムでは自治体としっかり連携していきたい考えだ。協定には近くの販売会社も組み込まれているため、万が一の時はすぐに動けるようになっている。
DENDOコミュニティサポートプログラムの仕組み(図はJ-CASTニュース作成)
三菱のPHEVを「走る蓄電池」と例える金子さん。20年12月には新型「エクリプス クロス(PHEVモデル)」が発売され、今後の活躍に期待が高まる。
「サポートプログラムは、災害の多い日本すべてのエリアをカバーしたいという思いがあって動き出しました。22年度までに全国の自治体との協定を目指していますが、まずは南海トラフ地震の被害を受ける可能性があるエリアをカバーできるように、太平洋側を中心にお声がけしています。全国どこで何が起きても、三菱のPHEVが役立てられたらと思います」(金子さん)
「三菱自動車は早い時期から電気自動車(EV)の開発を行ってきました。今回の出動台数は、のちに東電を通じて出した6台を含めて12台でしたが、こういった車両を個人の方にも利用していただくことで、災害時の二次被害を防ぐこともできるのではないでしょうか。三菱のPHEVを普及していく事が、三菱自動車、そして私の使命だと感じました」(奥山さん)
DENDOコミュニティサポートプログラムは21年2月に100件目の自治体と締結した。もちろん出動の機会がないことが一番望ましいが、備えあれば憂いなし。日本の防災に「三菱のPHEV」は欠かせない存在になってくるだろう。
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