熊本で被災し「災害時にとても頼りになる車」と認識
実は、三菱自動車が被災地に「電力で走る車」を派遣したのは、千葉の台風15号が初めてではない。2011年3月の東日本大震災での、電気自動車「i-MiEV(アイミーブ)」が始まりだった。
「ガソリンがなくて困っている状況からi-MiEVを90台以上派遣しました。主に、医療従事者を送迎する車として使ってもらいました。その時、現地の方々から『簡単に電気を取り出せたらいいのにね』という声がありました(※i-MiEVから電気を取り出すには『MiEV power BOX(ミーブ パワーボックス)』という大きな機械が必要)。それもひとつのきっかけとなり、アウトランダーPHEVの開発につながりました」(金子さん)
13年1月発売の「アウトランダーPHEV」には、スイッチひとつで最大約1500Wの電力を供給できるコンセントが、車内の2か所に装備されている。バッテリーの電力が少なくなると、ガソリンを使ってエンジンで発電し、1500Wの電気を供給し続けることができる。
実際に鋸南苑では、電子レンジ、冷蔵庫、テレビを使用した。車に蓄えた電気を家で使う仕組みである「V2H」を利用できることも強みの一つだ。
アウトランダーPHEV(提供:三菱自動車)
1500Wの電力で使用できる家電の例(画像はJ-CASTニュース作成)
その後、16年4月に熊本地震が発生。当時、仕事で熊本に訪れていた金子さんは被災し、アウトランダーPHEVの車内で2日間寝泊まりするという経験をした。
「現地ですごい揺れを経験しました。2日間過ごして感じたのが『電気を取り出せる』という安心感です。温かいものが食べられない中、電気を起こせる心強さがありました。 また、地震で路面が荒れていましたが、この車は悪路に強い四駆技術が入っており、移動も安心。そこで『災害時にとても頼りになる車』だと感じたのです。これがのちに、有事の際にPHEVを派遣する『DENDOコミュニティサポートプログラム』をつくったきっかけにもなりました」(金子さん)