電通本社ビル売却と「2023年問題」 テレワーク定着でこれから起きるコト

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空室率が上昇

   これら3社のケースは、業績悪化に伴うリストラという側面が強い。ただ、電通は、働き方改革、とりわけテレワークの拡大も一因で、そうしたオフィス削減や都心離れの動きも顕在化している。富士通は2023年3月末までに国内オフィス面積の半減を打ち出し、東芝も3割削減を検討している。パソナグループは24年までにグループ全体の管理部門で働く1800人の3分の2を兵庫県・淡路島に移すと発表している。

   こうした「構造的」問題の影響は不明ながら、コロナ禍による景気低迷の影響はすでに広がっている。仲介大手の三木商事によると、東京ビジネス地区(千代田、中央、港、新宿、渋谷の都心5区)の空室率は、2019年12月に、空前の1.55%まで低下したのを底に、コロナ感染拡大に伴って上昇に転じ、小幅低下した20年2月を除き、3月から11カ月連続で上昇中。6月1.97%、8月3.07%、10月3.93%、そして21年1月には4.82%となっている。

   平均賃料(1坪当たり)は2020年6月の2万2880円をピークに低下し始め、21年1月は2万1846円。賃料の絶対水準としてはなお低くはないが、需給の均衡が崩れる目安とされる空室率5%がなお遠い時点で下落に転じた。「昨夏以降、テレワーク拡大など先行きを懸念して早めにテナントを確保しようと賃料を下げた中小ビルが見られた」(業界関係者)という。一方、ある都心の大手ビルは「リーマンショック後に大テナントに解約され空室率が10%を超えたが、今はまだ、空室が出ても引き合いは根強い」という。

   中期的には、2023年に森ビルが東京・麻布台に高さ330メートルの超高層ビルを完成させる予定で、業界では他のビルを含め供給が急増する「2023年問題」と呼ばれている。

   テレワークの拡大を含め、都心のオフィスの需給の行方はなかなか見通せないが、サテライトのシェアオフィスの展開を始めた三井不動産のように、コロナの収束をにらんだ取り組みが待ったなしのようだ。

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