製薬大手がワクチン開発に消極的になった理由
そんな弱小メーカーばかりになった背景には「ワクチン開発に対する国の戦略の乏しさがある」と多くの医療関係者は指摘する。
日本政府は海外製ワクチンの活用には厳しい姿勢を示しながら、国内のワクチンメーカーには補助金を出して守ってきた。この「護送船団方式」が長く続いた結果、メーカーは世界の市場で戦える開発力や競争力を失い、企業の再編も進まず、規模的にも差がついてしまった。
また、日本ではワクチン接種による副反応を巡って訴訟が続いたことも響いた。「一度訴訟となれば、それまでに投じた巨額の開発費がすべて無駄になってしまう。このため製薬大手がどんどんワクチン開発に消極的になった」と業界事情に詳しい関係者は話す。
鳥インフルエンザの発生などを機に、日本の脆弱なワクチン産業の問題が鮮明化し、厚生労働省は2006年、「ワクチン産業ビジョン」を策定し、産業の育成を呼びかけた。しかし実際にはリーダーシップをとることもなく、今回のコロナ禍を迎えるたといえる。
業界の中には「ファイザーなど世界大手に日本メーカーが対抗するのはもはや不可能」との悲観論が根強い。ただ、感染症の世界的流行が今後もあり得るとの見方は強い。「国産ワクチンの開発体制を強化するため、国ぐるみで立て直しを急ぐしかない」との声も強まっている。