東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長に選ばれた橋本聖子氏(56)は五輪担当相を辞任した上で、2021年2月18日の就任記者会見に臨んだ。大臣規範は国務大臣と公益法人の役職員との兼務を禁じているためだ。ただ、それだけでは不十分だとの声が噴出している。
橋本氏は就任会見で、「IOC(国際オリンピック委員会)も、そして国も認めていただいている」として、参院議員は辞職しない意向を明らかにしている。後に自民党も離党しない意向を表明したが、IOCが掲げる「政治的中立性」に反するとして、野党などから批判の声が続出。橋本氏は一転して離党届を提出したが、引き続き議員辞職を求める声はくすぶっている。
「『政府のいいなりになるんじゃないか』という疑念を持つ人も少なからず...」
「政治的中立性」は五輪憲章でもうたわれている。例えば「オリンピズム」を普及させるためのIOCの役割のひとつとして
「スポーツや競技者が、いかなるかたちにおいても、政治的あるいは商業主義的に悪用されることに反対する」
とある。
すでに就任会見の時点で、閣僚辞任だけで十分なのか疑問視する声は出ていた。具体的には、「閣僚として政府側の立場にいたわけだが、見方としては『政府のいいなりになるんじゃないか』という疑念を持つ人も少なからずいると思う」という疑問とともに、議員辞職や離党の意向を確認する質問が出た。
橋本氏は
「今までも、このオリンピック、パラリンピック大会に関わらず、スポーツという政策的な部分においては、超党派で議論を重ねて、協力しあって、成功に向けて努力をしてきたという経緯がある。議員は辞職せずとも、この組織委員会の会長になるということは、IOCも、そして国も認めていただいているという状況だ。あとは疑念を持たれないような、行動を取っていくべきだと私自身は思っている。その点はしっかりと、ご理解がいただけるような状況にしていきたいと思っている」
などとして議員辞職を否定。さらに、政府、東京都、組織委の三者は「連携をしないといけないが、役割はすべて違う」とした上で、
「国に左右をされるということではなく、その経験を生かして、組織委員会の会長という立場で、何をやっていかなければいけないかということを、私なりに理解しているつもりだ」
などとして中立性は守られることを主張した。この時点では離党について言及を避けていたが、翌2月19日午前に橋本氏は自民党本部で二階俊博幹事長と会談。その後、記者団に対して、議員辞職も離党もしない考えを明らかにしていた。