JTは大規模リストラでよみがえるのか

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   日本たばこ産業(JT)が大規模なリストラに乗り出した。福岡県内2工場を閉鎖するとともに、社員の希望退職やパートの退職勧奨などで、国内従業員の約2割に当たる約3000人を削減するなどが柱だ。国内のたばこ需要の減少とシェア低下を受けて生産・営業体制を縮小する。1994年の上場以来、初の減配も発表し、株式市場で株価が急落した。

   2021年2月9日、寺畠正道社長がオンラインの決算発表の記者会見を行い、リストラ策も発表した。閉鎖するのは九州工場(福岡県筑紫野市)と、子会社の日本フィルター工業田川工場(同県田川市)で、時期はいずれも22年3月末。九州工場は1986年に操業を始め、2020年度の生産本数は約87億本。同工場の閉鎖に伴い、国内の生産拠点は主力の北関東工場(宇都宮市)など3カ所になる。

  • JTの今後の行方に注目が集まる(画像はJT公式サイトより)
    JTの今後の行方に注目が集まる(画像はJT公式サイトより)
  • JTの今後の行方に注目が集まる(画像はJT公式サイトより)

国内と海外に分かれていた「たばこ事業」を一本化

   また、国内と海外に分かれていたたばこ事業を一本化し、その本社機能は2022年1月に、海外たばこ事業の本社機能があるスイス・ジュネーブに統合、意思決定のスピードを速め、効率的な事業運営体制を構築し、成長カテゴリーである加熱式たばこへの投資を集中的に行う考えだ。国内では15支社・145支店体制を、47支社に再編する。香川県、宮崎県にある原料調達機能も22年4月に西日本原料本部(熊本県合志市)へ集約する。

   工場などの再編に合わせて人員削減を実施し、たばこ事業やコーポレート部門の46歳以上の社員に希望退職を募るなどで1000人規模を削減。営業活動を補佐するパートタイマー約1600人に退職勧奨を行うほか、定年退職後に再雇用した契約社員ら約150人の希望退職も募る。今後、労働組合と協議し、22年3月末までに実施する予定だ。

   今回のリストラの理由は、国内のたばこ事業の不振だ。JTによると、20年末の国内のたばこ販売量は5年前の3分の2に減った。また、「たばこ一本足」からの脱却を目指した多角化も、競争激化で順風とは言えない。リストラ策では冷凍食品の製造・販売を手掛ける子会社、テーブルマークも、香川県内3工場を10月末に閉鎖し、契約社員など100人の希望退職を募ることも盛り込んでいる。

   同じ日に発表した20年12月期連結決算(国際会計基準)は売上高にあたる売上収益が前期比4%減の2兆925億円、最終(当期)利益は11%減の3102億円だった。

   21年12月期は、売上収益が1%減の2兆800億円、営業利益は23%減の3630億円。工場廃止や人員削減などに約370億円の費用も見込むこともあり、純利益は23%減の2400億円になる見通し。全体としてはたばこ増税などの影響で販売数量が減少するほか、ロシアルーブルなど新興国通貨の下落などで海外たばこ事業の収益が目減りする。

海外市場をいかに伸ばすか

   寺畠社長は会見で「(国内のたばこ需要は)今後も継続的に減少すると見込んでいる。コロナ禍で不確実性が高まる事業環境も踏まえ、このたび厳しい決断をした」と、リストラへの決意を語った。攻めの対策としては、「加熱式たばこに経営資源を集中する」として、2021年下期に高温加熱式たばこの新デバイス(吸入器)を投入するなどテコ入れを図る。新デバイスは海外市場にも展開する方針で、たばこ事業では売収益、利益ともすでに国内の約2倍を稼ぐまでになっている海外をいかに伸ばすかが成長のカギになる。

   21年12月期の配当は、前期比24円減の年間130円とする方針を示した。1994年の上場以来、初の減配だ。

   これを受け、東京株式市場の2月10日のJT株価は一時、前日終値比217円(10.1%)安い1934円まで下げ、終値も160.5円安の1990.5円となり、その後も低迷したままで、日経平均3万円回復に沸く市場の中で蚊帳の外といった趣だ。市場では減配が「想定外」と受け止められたようだ。

   ただ、それでもJT株の配当利回り(2月17日現在)は6.64%と、東証1部でトップ5に入る高さ。今回の発表では、株主還元方針を見直し、中長期的に配当性向(最終利益に対する配当金の割合)75%を目安とすると掲げており、「個人投資家には魅力的」(アナリスト)との見方もある。

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