フリーマーケットアプリのメルカリの株価が2021年2月16日、一時6400円まで上昇し、上場来高値を更新した。
メルカリ株は12日、東証マザーズに18年6月に新規上場した際の高値(6000円)を2年8か月ぶりに上回る6230円を記録したばかり。米スーパーボウルへの広告初出稿の影響で、海外勢による買いも多かったとされることも、株価上昇の一因とみられる。
「30秒5億」のスーパーボウルCM
メルカリが2月4日に発表した20年12月中間連結決算は中間期として初の営業黒字を記録する内容ではあったが、取引額の伸びの鈍化などが嫌気され、5日はむしろ売り浴びせられた。
ただ、果敢に米国市場に挑戦する姿勢などを見直す買いが入り2月第2週に株価はぐんぐん上昇。現地時間2月7日夜の米スーパーボウルへの広告初出稿の影響で海外勢による買いも多かったとされている。
スーパーボウルは、毎年この時期に行われる米アメフトリーグ「NFL」のシーズン王者を決める試合。例年40%近くの視聴率をたたき出す、米国の一大スポーツイベントだ。今年はフロリダ州タンパのレイモンド・ジェームス・スタジアムで行われ、タンパベイ・バッカニアーズがカンザスシティ・チーフスを31対9で破って18年ぶり2回目の優勝を果たした。
NFL公式サイトによれば今回のスーパーボウルの総視聴者数(米国)は9640万人を記録した。そんなお祭り騒ぎだけにCMも名だたる大手企業がこの試合のためのものを作る。その中身が話題になることも多く、広告料は30秒で5億円を超えるとも言われる。
米国事業をより軌道に乗せたいメルカリは今年初めてスーパーボウルに15秒の広告を出稿した。それが米国人投資家の記憶に残り、決算内容などを確認しての買いが広がった、と指摘する市場関係者もいる。
米市場への「攻めの姿勢」に評価
それでは20年12月中間期の決算内容を確認しておこう。営業損益は13億円の黒字(前年同期は138億円の赤字)。四半期ベースでは3四半期連続の営業黒字となった。
アプリの取引額を示す流通総額は国内が3676億円と前年同期比31%増。米国は582億円で前年同期の2.3倍だった。こうした点を踏まえて大和証券は2月8日付リポートで目標株価を6100円から6800円に引き上げた。これも2月第2週の上昇を後押ししたようだ。
決算発表直後に市場に不評だったのは、四半期ベースでみると前年同期比の国内流通総額の伸び率が鈍化している点。4~6月(40%)、7~9月(34%)、10~12月(28%)という具合だ。一方、米国の10~12月の流通総額は7~9月に比べると9%減だった。年末商戦という季節性からみて異変とも言える。
ただ、SMBC日興証券は、米国では同業他社の流通総額も10~12月は7~9月比で減っており、4~6月、7~9月はコロナ禍下でバブルだったとの見方があるとしている。
いずれにせよ、コロナ禍がメルカリの業績に順風だったのは間違いない。ワクチン接種などによってコロナ後の世界が見え始めているなかでもメルカリ株が買われて上場来高値を更新したのは、スーパーボウルの広告出稿に象徴される米国市場への攻めの姿勢であろう。
市場では「成長途上でもあり、黒字にこだわらず投資を続けて流通総額を伸ばせば株価もさらに上がるのではないか」との声が聞かれる。