かみ合わない論戦が目立つ国会の論戦で、珍しく質問者と答弁者の歩調がそろう場面があった。2021年2月15日の衆院予算委員会で行われた、菅義偉首相と立憲民主党の野田佳彦元首相とのやり取りだ。
首相が首相公邸に住むべきかに関する議論では両者の意見が鋭く対立したものの、財政規律をめぐる議論では大筋で方向性は一致。財政再建論者として知られる野田氏の「財政も緊急事態」という認識を共有すべきだという訴えに、菅氏は「ご指摘をしっかり受け止める」などと応じた。
財政出動は「『将来の世代に申し訳ない』と言って借金してでも」
野田氏が衆院予算委で質問に立つのは16年以来5年ぶり。野田氏は財政に関する議論の冒頭で、新型コロナウイルス対策のために国債を発行して財政出動することはやむを得ないとの見方を示した。
「財政出動はやむを得ない。医療機関や医療従事者を支援しないといけない。持続化給付金が必要だ、10万円の給付が必要だ、家賃の支援も必要だ、いろんなことが大事。皆さんが生活に困窮しないように、事業が継続できるように、大盤振る舞いと言われても、それはもう『将来の世代に申し訳ない』と言って、借金してでもやっていかないといけない対策はいっぱいある」
その一方で、一連の対応で財政も「緊急事態」だとの認識を共有するようにも求めた。具体的には、歳出が右肩上がり、税収が右肩下がりになり、両者の差が開いていくグラフの様子を「ワニの口」と表現。この表現を踏まえながら、歳出が急増していることに危機感を示した。
「その結果が、この令和2(2020)年の(歳出を示す)赤線の跳ね上がり方。175.7兆。そして、税収が55兆へと下がりましたから、(税収を示す)青線は下がってきている。ワニの口が開くというよりも、今の状況、直近の状況はですね、ワニの下あごが、ちょっと外れかかった。そして、上あごは...、これはもうねぇ、何て言ったらいいんでしょうねぇ。めくれ上がったというような状況ですね。へし曲がったというか...」