再びの暗転 第2波
スペインでは6月に非常事態が解除され、レストランやバルが再開された。客席は50%まで、カウンター席は禁止という制限はあったが、多くの店が歩道にテーブルを並べ、そこで食事を提供した。スペインやフランスはもともと屋外の席の人気が高いので、利用者にとっても好都合だ。こうして外から見る限り、街はにぎわいを取り戻したかのように見えた。
だがスペインを含む欧州は、バカンス明けと共に感染者が増え始め、10月には急速に再拡大した。第2波の襲来で舞台は再び暗転した。1日の新規感染者はフランスでは3万人を超え、イギリスでは2万3000人、スペインでは1万5000人に達し、それぞれ4月のピーク時の数倍に膨れあがった。
フランス政府は10月17日に緊急事態を宣言し、パリやマルセイユなど9都市で午後9時から翌朝6時までの外出禁止令を出した。
スペインでも政府が10月12日、新規感染者が多いマドリッド州に対して非常事態を宣言し、通勤や通学などを除く都市間の移動を禁止した。レストランも午後10時以降に新たな客の受け入れを禁止した。
カタルーニャ州では、政府の非常事態宣言がないのに、州政府の決定で10月16日からレストランやバルの営業が禁止された。
10月16日からの2度目のレストラン・バル閉店命令で、街は再び静まりかえった。屋外席のための日よけは閉じられ、テーブルや椅子は積み上げられたままになった。
商店や飲食店などの休業や減収に対して政府が補償する政策は延長された。この制度があるので、反対の動きは表面化しなかった。
バルセロナレストラン協会の会長は2度目の閉店命令が出た翌日、「バルやレストランの15%はすでに廃業している。再開した店も40%は来春か夏には消える可能性がある」と警告した。数カ月後には半分がなくなるという見通しだ。廃業した店の従業員は解雇され、失業する。新しい仕事を見つけることが困難な状況で放り出される。
飲食業だけではない。観光はスペイン最大の産業であり、国内総生産の15%(約22兆円)と260万人の雇用をもたらしていた。旅行客が4分の1に激減し、ホテルの7割が閉ざされた。
スペインには自動車工場が多く、一昨年は世界9位の年間280万台を生産した。その中の日産自動車バルセロナ工場が閉鎖されることになった。