ウイグル報道?免許取り消しの報復? BBCは、なぜ中国で「放送禁止」になったのか

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   国内外の放送について規制を続けてきた中国政府が、英BBCの中国国内での放送を禁止する措置に乗り出した。中国政府はこれまでにも、NHKが天安門事件関連のニュースを報じるときは一時的に画面を黒くするなど、国外の放送局が中国国内で流す番組について妨害を続けてきた。元々BBCは中国の一般家庭で見るのは極めて困難で、受信できるのは外国人が宿泊する高級ホテルや在外公館などに限られてきた。その締め付けをさらに強化した形だ。

   中国政府はBBCの報道が「中国の国益と民族的団結を損なった」と主張しているが、具体的にどの報道が原因になったかを明示していない。ただ、2021年2月に入ってBBCは新疆ウイグル自治区の「再教育」施設に収容されたウイグル族の女性らが組織的にレイプを受けていたと報じ、中国側は「事実無根」と猛反発。ほぼ同じ時期に中国国営の英語の国際放送、中国環球電視網(CGTN)の英国内での放送免許取り消しが決まっている。こういったことへの報復だとの見方も出ている。

  • ロンドンの英BBC本社。中国政府の対応が波紋を広げている
    ロンドンの英BBC本社。中国政府の対応が波紋を広げている
  • ロンドンの英BBC本社。中国政府の対応が波紋を広げている

「中国の国益と民族的団結を損なったため」

   中国政府でメディアを監督する「国家テレビラジオ総局」は2月12日、BBCがテレビで行っている国際放送「BBCワールドニュース」の中国での放送を禁止すると発表した。BBCの中国に関する報道の内容が、中国の放送や国外衛星放送の規則に「重大な違反」をしており、「ニュースは真実で公平でなければならないという要件に違反し、中国の国益と民族的団結を損なったため、国外の放送を中国で放送する要件を満たしていないと判断された」と主張。BBCに対して「中国国内の放送継続を認めず、今後1年間は申請を受け付けない」とした。

   具体的にどの報道が「要件に違反」のかは明示されていないが、「民族的団結」という文言がウイグル問題を示唆していると読むこともできる。BBCは2月2日(英国時間)、新疆ウイグル自治区の「再教育」施設で組織的レイプや性的虐待、拷問が行われてきたとする証言を、被害者の顔と名前つきで放送した。中国政府の反応は素早く、中国外務省の汪文斌副報道局長は2月3日の記者会見でBBCの報道は「事実無根」だとした上で、

「そもそも『再教育施設』なるものは存在しない。過去の報道で取材を受けた人の中には、誤情報を拡散する「役者」だと判明した人もいる」

などと主張した。

「共産党が編集権を事実上握っている」と問題視

   もうひとつが、CGTNの問題だ。英国の通信業界の独立監視機関、放送通信庁(Ofcom、オフコム)は2月4日にCGTNの免許取り消しを発表している。英国の放送法では、放送免許を持っている事業者が編集方針について責任を持ち、特定の政治団体の影響を受けないことが求められている。CGTNの免許を持っているのはスター・チャイナ・メディア・リミテッド(SCML)と呼ばれる会社だが、調査の結果、編集権を事実上中国共産党が握っていることが分かったとして取り消しが決まった。放送を通じて自国の主張を浸透させよとしていた中国にとっては痛手で、やはり中国側は反発した。中国外務省の汪文斌副報道局長が2月5日の記者会見で、

「Ofcomはイデオロギー的偏見に基づいた政治的な理由でCGTNを弾圧している」
「CGTNは国際的なメディア組織として英国の法令やジャーナリズムの職業倫理を順守し、客観性、公平性、真実性、正確性の原則に基づいた報道を行っている」

などと主張した。ただ、中国外務省がウェブサイトに公開している会見録で確認できる限りでは、免許取り消しの原因になった「編集権を事実上中国共産党が握っている」ことに対する反論は見当たらなかった。

   中国政府の対応を受け、BBCは

「中国当局がこのような措置を決めたことに失望している。BBCは世界で最も信頼されている国際放送局で、世界中のニュースを公正・公平に伝えている」

との談話を発表している。

   影響は、香港にも波及している。公共放送のRTHKは、2月12日からBBCのラジオ国際放送「BBCワールドサービス」の中継放送と、広東語のラジオで流していたBBC制作の時事番組の放送を取りやめることを発表した。放送中止を発表するRTHKの声明では、その理由を

「国家テレビラジオ総局が、中国領内でのBBCワールドニュースのサービス継続を認めず、翌年のBBCの申請を受け付けないと発表したため」

と説明している。中国政府の放送に関する権限が「特別行政区」である香港にも及ぶとも受け止められかねず、香港の放送業界のあり方にも影響を与えそうだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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