「共産党が編集権を事実上握っている」と問題視
もうひとつが、CGTNの問題だ。英国の通信業界の独立監視機関、放送通信庁(Ofcom、オフコム)は2月4日にCGTNの免許取り消しを発表している。英国の放送法では、放送免許を持っている事業者が編集方針について責任を持ち、特定の政治団体の影響を受けないことが求められている。CGTNの免許を持っているのはスター・チャイナ・メディア・リミテッド(SCML)と呼ばれる会社だが、調査の結果、編集権を事実上中国共産党が握っていることが分かったとして取り消しが決まった。放送を通じて自国の主張を浸透させよとしていた中国にとっては痛手で、やはり中国側は反発した。中国外務省の汪文斌副報道局長が2月5日の記者会見で、
「Ofcomはイデオロギー的偏見に基づいた政治的な理由でCGTNを弾圧している」
「CGTNは国際的なメディア組織として英国の法令やジャーナリズムの職業倫理を順守し、客観性、公平性、真実性、正確性の原則に基づいた報道を行っている」
などと主張した。ただ、中国外務省がウェブサイトに公開している会見録で確認できる限りでは、免許取り消しの原因になった「編集権を事実上中国共産党が握っている」ことに対する反論は見当たらなかった。
中国政府の対応を受け、BBCは
「中国当局がこのような措置を決めたことに失望している。BBCは世界で最も信頼されている国際放送局で、世界中のニュースを公正・公平に伝えている」
との談話を発表している。
影響は、香港にも波及している。公共放送のRTHKは、2月12日からBBCのラジオ国際放送「BBCワールドサービス」の中継放送と、広東語のラジオで流していたBBC制作の時事番組の放送を取りやめることを発表した。放送中止を発表するRTHKの声明では、その理由を
「国家テレビラジオ総局が、中国領内でのBBCワールドニュースのサービス継続を認めず、翌年のBBCの申請を受け付けないと発表したため」
と説明している。中国政府の放送に関する権限が「特別行政区」である香港にも及ぶとも受け止められかねず、香港の放送業界のあり方にも影響を与えそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)