高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 
JAL・ANA巨額赤字でも「統合」のあり得なさ 異なる企業文化、2社許容できる市場規模

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産業組織論から見れば航空会社を2社許容できる

   経済学の産業組織論からみれば、企業文化はどうでもよく、経済規模から見て航空会社は何社まで許容できるかとなる。大雑把な分析であるが、日米欧でJALとANAクラス以上の主要航空会社数をみると、それぞれ2社、7社、6社である。日米欧のGDPがそれぞれ5兆ドル、21兆ドル、15兆ドルであることから見れば、2.5~3兆ドル程度で1社許容となる。この観点からみれば、2兆ドルの韓国で2社を統合するのは、市場規模に見合っていて合理的だ。また、欧州で航空会社への公的資金注入が行われても統合がないのも納得だ。

   こうした産業組織論の観点から見れば、日本のGDPでは航空会社を2社許容できるので、JALとANAを統合する必要はないし、もし統合するとすれば、人為的な独占を作ることになって独禁法にも抵触しかねない。

   もっとも、この立場では、非情な先行きになることもある。経営論から、社風の違うJALとANAは合併すべきではないとされるが、産業組織論からは、もし日本の市場規模が小さくなり万が一にもGDPが半減したらどうなるか。その場合には、JALとANAは社風が違うなどと悠長なことは言っておられずに、生き残るためには統合が必要になる。

   コロナ禍で経営が芳しくない会社が今後出てくるだろうが、再編話もあるだろうが、それらによく注意したい。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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