コロナ禍と「しょうゆ」需要 キッコーマン株価にみる期待と不安

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   キッコーマンの株価が2021年2月4日の東京株式市場で一時、前日終値比6.6%(490円)安の6900円まで下落した。7000円割れは約1カ月ぶり。取引時間中に発表された20年4~12月期連結決算は純利益が前年同期比0.8%増の236億円とコロナ禍下においてはまずまずだったが、21年3月期通期の業績予想について期待された上方修正がなく、失望売りが膨らんだ。その後は市場全体が上昇基調であることもあって戻している(2月8日終値7360円)が、昨年来高値の7670円(21年1月21日)とはまだ差がある。

   発表された2020年4~12月期連結決算内容は、売上高は前年同期比2.0%減の3482億円、営業利益は3.7%増の338億円、経常利益は0.4%増の337億円だった。売上高で全体の約6割、営業利益で全体の約7割を占める米欧などの海外部門は売上高が1.9%減、営業利益が9.4%増だったが、国内部門は売上高が1.9%減、営業利益が8.8%減で海外より苦戦している。

  • 今後の「しょうゆ」ニーズの動向は?
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「上方修正なし」に反応か

   キッコーマンの主力商品であるしょうゆに対して世界的に「巣ごもり需要」があるものの、ロックダウンや営業時間短縮などによって外食産業がダメージを受けており、より外食産業への浸透度の高い国内で影響が大きかった。とはいえ純利益でみると通期業績予想の266億円に対する進捗率は88.7%に達しており、上方修正がないことに不信感を持った投資家が売りに走ったようだ。

   1917年創立のキッコーマンは国内のしょうゆ市場で今でもシェア約3割のトップメーカーだが、食品業界において海外進出の先兵とも言える存在だ。戦後まもなく57年に米サンフランシスコに販売会社を設立し本格的に米国進出を果たして半世紀以上たつ。「肉にしょうゆが合う」とアピールし、店頭試食で売り込んだ。米国ではいちはやく73年に中西部ウィスコンシン州に工場を設け、98年にカリフォルニア州フォルサムに米国第2工場を建設。キッコーマンは「米国の半分近い家庭にしょうゆが常備されている」としている。欧州では97年にオランダに工場を建てた。21世紀に入って中国の工場が出荷を始めている。

   海外に強いことに対して株式市場の評価も高い。野村証券は2020年12月1日に目標株価を5000円から5600円に引き上げた際、「新型コロナを機に内食シフトが進む中で、海外でしょうゆの浸透率が従来予想以上に高まった」と説明した。ただ、足元で買われすぎの面は否めなかった。急落した2月4日の安値(6900円)でさえ野村の目標株価を1300円も上回っている。2月4日の急落には「割高ではないか」と疑問を持った投資家が狼狽売りした可能性もありそうだ。

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