「何とか保存の折り合いがつけば...」 新発見の鉄道遺産「高輪築堤」が直面する「課題」

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大規模再開発用地での大発見

   ところが、当地はJR東日本の大規模再開発計画があり、そもそも発掘調査もそれに先立って行われたものだ。

   再開発計画「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)」は、高輪ゲートウェイ駅西口に4棟のビルが建ち、4つの街区にマンション・商業施設・オフィスなどが入居する計画で、2025年頃の完成を見込む。築堤が出土したエリアとほぼ重なる場所だ。計画通りに開発を進めるなら、高輪築堤は埋め戻しの上解体を免れない。

   出土した遺跡はそのまま現地で保存する場合と、調査し記録を残した上で埋め戻し土地を活用する場合がある。後者の「記録保存」の方が、調査に時間がかかると川上さんは話す。

   現在も港区教育委員会などが築堤を調査中で、これからどうなるかは全く決まっていない。現時点では「築堤をどこまで保存できるか、JR側とも協議中です」(川上さん)とのことで、調査の方も「旧新橋停車場の場合は発掘調査に年単位がかかりました」という前例があり、再開発のスケジュールにも影響するかもしれない。

   JR側は20年12月時点で築堤の一部保存や移設保存を検討している と報じられていたが、築堤の規模や調査も途上であるため結論が出るまでには時間がかかりそうだ。

「築堤が埋め立てられたのも約100年前のことで、これほどよい状態で残っているとは予想していませんでした。JRにとっても自社の鉄道の原点で、近代化を象徴する遺産でもあるので、できればかなりの部分を保存できるとよいのですが」

   と川上さんは話した。

   予想外の大発見で、学界からも築堤の保存を訴える声が出た。日本考古学協会が2月3日までに「当時の最先端の土木工学を駆使したもので、日本の鉄道文化の始まり」「国史跡か国特別史跡に相当する」と、現地での全面保存を求める要望書をJR東日本・文化庁・国土交通省などに提出した。

   1月に現地見学会に参加した鉄道ライターの枝久保達也さんは、現地を見て「土木遺産なので、作られたその場所にあることに大きな価値があると思います。何とか保存の折り合いがつけばよいですが、JRにとって再開発は、土木遺産が出土するリスクも考慮して計画する必要があるかもしれません」と語った。

   鉄道遺産としては旧新橋停車場以来の大発見と思われる高輪築堤の行方は、近代化遺産が眠る大都市での文化財の保護と都市開発の両立という課題を問うているようだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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