英エコノミスト紙の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」(EIU)が毎年発表している「民主主義指数」ランキングの2020年の順位が21年2月2日に発表され、日本は19年より3つ上げて21位だった。
ランキングは5つの観点から世界中の国々に点数をつけて算出する仕組み。新型コロナウイルスの感染拡大で、ロックダウン(都市封鎖)をはじめとする強制力をともなう措置に踏み切ったことで、世界的に点数は低下する一方で、日本をはじめとする東アジアの国々は上昇。新型コロナ対策では批判を受ける日本政府だが、点数の上昇は「政府に対する国民の信頼感の向上」が背景にあると分析されている。
ロックダウンしたフランスは「欠陥がある民主主義」に転落
調査は世界の176か国の民主主義について、「選挙プロセスと多元主義」「政府の機能」「政治参加」「民主的な政治文化」「市民自由度」の5つの観点から10点満点で評価する仕組みで、点数ごとに「完全な民主主義」(10.0~8.0)「欠陥がある民主主義」(7.9~6.0)「(民主主義と強権体制の)混合型」(5.9~4.0)「強権体制」(3.9~0)の4つに分類する。
20年は全世界の平均は5.37点で、06年の調査開始から最低を記録した。その原因のひとつが新型コロナへの対応で、20年のEIUの発表では、
「ランキングでは、政府の措置に対する国民の支持があったかどうかにかかわらず、市民の自由を制限したり、緊急事態の権限行使を適切に監視できなかったり、表現の自由を否定したりする国の評価が下がった」
と説明している。その一例として紹介されたのがフランスで、19年は8.12点で20位だったが、20年は7.99点で24位に順位を下げた。分類上も「完全な民主主義」から「欠陥がある民主主義」に転落した。
大統領選の大混乱が記憶に新しい米国は、「政治参加」の評価が上がったものの、「政府の機能」がダウン。19年の7.96点(25位)が20年は7.92点(25位)と微減し、引き続き「欠陥がある民主主義」にとどまった。
日本は6年ぶりに「完全な民主主義」に
19年は7.99点で24位だった日本は、20年は8.13点で21位にランクアップ。14年以来6年ぶりに「完全な民主主義」に復帰した。EIUの報告書では
「この変化は、政府に対する国民の信頼感の向上によってもたらされた」
と指摘されているが、日本国内からは異論も出そうだ。
日本は、アジア太平洋地域ではニュージーランド(9.25点、世界4位)、オーストラリア(8.96点、世界9位)、台湾(8.94点、世界11位)に次ぐ順位で、韓国(8.01点、世界23位)を僅差で上回った。
特に台湾は、19年の7.73点、世界31位から大きく評価を上げている。報告書では背景として、20年1月に行われた国政選挙で若者を含めて高い投票率を記録したことや、新型コロナ対策ではロックダウンなどの強い措置が行われず、住民が自発的に対策に協力していたことなどを挙げている。
1位はノルウェー9.81点、2位はアイスランド9.37点、3位はスウェーデン9.26点だった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)