欧州市場を意識した戦略モデル
バッテリーの容量が35.5キkWhで、航続距離が200キロ台後半のマツダMX-30EVモデルとホンダeに対して、バッテリー容量が40kWhで航続距離が322キロの日産リーフは332万円から、同じく62kWhで458キロの「リーフe+」は441万円からだ。
このコストパフォーマンスから考えると、ユーザーがマツダMX-30EVモデルやホンダeを積極的に選ぶ理由は見つけにくい。ユーザーは同じ価格であれば、バッテリー容量が多く、航続距離が長いEVを選ぶだろう。
これはマツダとホンダの販売戦略にも表れている。マツダMX-30EVモデルの国内販売目標年間500台は、ハイブリッド仕様の「MX-30」が月間1000台(年間1万2000台)であるのに比べ、ケタ違いに少ないのだ。ホンダeは国内の受注が順調のようだが、欧州の年間1万台に対して国内の販売計画は1000台と少ない。
マツダとホンダが日本より欧州を重視するのは、この両EVが欧州の環境規制を意識した両社の戦略モデルであるからだ。
欧州の環境規制とは、欧州連合(EU)が21年から強化する排ガス・燃費規制で「企業別平均燃費基準(CAFE)方式」と呼ばれる。メーカーごとに販売する乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量に基準を設け、超過したメーカーに罰金を科すという厳しいものだ。
マツダもホンダも欧州市場に強く、この罰金を回避もしくは低減するためには、欧州で1台でも多くEVを売る必要がある。MX-30EVモデルもホンダeも主力は欧州市場への輸出であり、国内販売は二の次というのが両社の本音だろう。
もちろんEVの実力はバッテリー容量や航続距離だけでは測れない面もある。近距離の通勤や買い物にしかクルマを使わないというユーザーにとっては、少々割高だが、マツダとホンダが欧州市場に投入した最新の環境対応車の実力を知るチャンスともいえる。
日本では09年発売の日産リーフがモデルチェンジと改良を重ね、一定のユーザーの支持を得た。ホンダに加え、マツダが日本でもEVを発売することで、EVの真価が問われるのは間違いない。