「ゲームストップ」。今回のことがなければ、多くの日本人は一生聞くことがなかった名前だろう。米国のゲームソフトの小売り大手の会社だ。
本社はテキサス州、米国を中心に5000以上の店舗を持つが、オンラインゲームの台頭に新型コロナウイルス禍が加わり、2020年7~9月期の売上高は前年比3割も減少し、通年でも赤字見通しと、お世辞にも優良企業とはいいがたい。
その株価が、このところ、常識では考えられない急騰と急落を繰り返し、あおりでダウ工業株30種平均株価が一時、3万ドルの大台を割り込むなど、米株式市場を揺さぶっているのだ。
個人投資家が「反乱」を起こした理由
ゲームストップの株価は2020年を通じて概ね10ドルそこそこの水準で推移し、最近まで1日の出来高も1000万株に届かない日がほとんどという目立たない存在で、12月には相場全体の上昇トレンドに乗ったといっても20ドルにやっと届いた程度だった。
それが、21年になって1月13日に前日終値比11.45ドル高の31.40ドルへ1.57倍に急騰し、出来高も1億4450万株に膨らんだのを皮切りに、以降、激しい値動きになり、28日には一時、483ドルの最高値をつけた。この日の最安値は112.25ドルという常識ではありえない乱高下だ。他に映画館大手AMCエンターテインメントなどの株価も、ゲームストップほどではないが、大きく動いた。
こんなことが起きたのは、個人投資家のファンドへの「反乱」が原因だという。
株価下落を見込んで「空売り」をする「信用取引」がある。その企業の株を保有していなくても、例えば時価100ドルの時に「売り」を注文し、一定期間後、株価が80ドルに下がったところで買い戻して精算すると、差し引き20ドル儲かる。
ヘッジファンドなどは、これを大量に仕掛ける。それが市場に伝わり、値下がりを見込んで株主が慌てて売り、株価が下がれば、まさにファンドの思うつぼ。巨額資金で売りを仕掛けるのは実質的に相場操縦だとの個人投資家の反発が根強い。