菅首相が「初プロンプター」 記者会見は良くなった?

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   菅義偉首相は2021年2月2日夜に開いた記者会見で、「プロンプター」を初めて使用した。安倍晋三前首相はプロンプターを使っていたが、菅氏はこれまで使わずに会見に臨んでおり、冒頭発言で原稿に目を落とす様子が目立っていた。

   不足も指摘される菅氏の発信力を少しでも上げる狙いがあるとみられ、プロンプターを使用したことで、冒頭発言で下を向く機会が減ったことを評価する声もある。ただ、質疑応答では基本的にはプロンプターは使えないため、やはり会見後半では目線が下を向く場面が目立った。

  • 初めてプロンプターを使って記者会見に臨む菅義偉首相
    初めてプロンプターを使って記者会見に臨む菅義偉首相
  • 冒頭発言が終わるとパネルが下りて質疑応答が行われた
    冒頭発言が終わるとパネルが下りて質疑応答が行われた
  • 初めてプロンプターを使って記者会見に臨む菅義偉首相
  • 冒頭発言が終わるとパネルが下りて質疑応答が行われた

事前に原稿の内容が決まっている演説や記者会見の冒頭発言に向いている

   プロンプターは、事前入力された原稿の内容を、演台の前にある2枚の透明なパネルに映し出す仕組み。目線を下に落とさず文字を読むことができ、事前に原稿の内容が決まっている演説や記者会見の冒頭発言に適している。会見場の記者やカメラマンにとっては演台前のパネルは非常に目立つが、中継では首相の顔がアップになることが多く、現場に比べればテレビ画面上の違和感は小さい。

   報道などで確認できる限りでは、安倍氏以外にも細川護熙(1993~94)、森喜朗(2000~01)、麻生太郎(08~09)の歴代3首相が利用してきた。安倍氏の場合は、冒頭発言の時だけパネルが演台の前に現れ、冒頭発言が終わるとパネルが下がる運用だった。質問の内容はある程度事前通告されているとみられ、時折想定問答集に目を落としながら質問に答えていた。例外が20年8月28日の退陣表明会見で、プロンプターなしで冒頭発言に臨んだ。この理由について問われた安倍氏は

「今日はこのギリギリまで原稿が決まっていなかったということもあり、私も(原稿を)推敲していたので、こうした形になった」

と応じている。

   菅氏は安倍政権の官房長官として記者会見に臨んできたが、プロンプターは使ってこなかった。官房長官はポストイットが多数挟まれたファイルを手に会見に臨み、質問内容に応じてファイルを参照しながら答弁するため、原稿の事前入力が現実的ではないためだとみられる。官房長官時代の流れを引き継ぐ形で首相会見でもプロンプターを導入してこなかったが、1月27日の参院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫代表代行が「そんなメッセージだから、国民に危機感が伝わらないんですよ!」などと声を張り上げて菅氏の発信力不足を非難。菅氏が「少々失礼じゃないでしょうか」と口にする場面があり、政権としても発信力強化を課題として認識していたようだ。

「原稿を使うのは悪」なのか

   菅氏は2月2日の記者会見で、10都府県を対象に緊急事態宣言の延長を決めた経緯を説明。プロンプターを導入した経緯に関する質問も出た。菅氏は記者会見を通じて「国民の皆さんにきちんと情報発信し、説明責任を果たしたいと思って臨んでいた」とした上で、導入について「そうした観点からの一助になればという、いろいろな方からお考えがあった」と説明。

「受け止め方というのは皆さんがお決めになることだが、機会に応じて活用していきたい」

と話した。

   ただ、プロンプターを使っても、それだけでは原稿を「棒読み」していることには違いはなく、自分の言葉で話さなければ発信力は上がらない、という指摘は根強い。加藤勝信官房長官の2月3日午前の記者会見では、「原稿を使うのは悪」だという考え方があることについての見解を問う質問が出て、加藤氏は原稿を使うことの理解を求めた。

「きちんと発信をしていくために、やはり原稿に基づいて発信していくことは大事。一般的に海外の首脳も、プロンプターを使って最初のメッセージは発信しておられるのではないか。その後の記者の皆さんとのやり取りは、もちろん、その場その場で対応させていただくことになると思う。そうしたことを通じて、トータルとして、国民の皆さんにしっかりと情報を発信していきたい」

   なお、ツールとしてのプロンプターの意義は与野党ともに認識している模様で、立憲民主党の枝野幸男代表は1月31日に開かれた党大会で、プロンプターを使って演説している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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